岐阜新聞 映画部

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"ふっくら、豊満"、ボテロの人間ドキュメンタリー

2022年06月13日

フェルナンド・ボテロ 豊満な人生

© 2018 by Botero the Legacy Inc. All Rights Reserved

【監督・脚本・製作】ドン・ミラー

奥さんは替えても作風は一切変えてない

大阪市ではメインストリートである御堂筋に、世界的にも一級品である彫刻を設置していく「御堂筋彫刻ストリート」の整備を進めている。現在29体が設置されているが、その中の1つがフェルナンド・ボテロの「踊り子」である。講評では「他の彫刻家の裸婦像よりも肉付きがよく、ユーモラスで温かい」と解説されている。

コロンビアの芸術家としてはノーベル文学賞を受賞した「百年の孤独」のガルシア=マルケスと共に世界的に知られているのが、本作の主人公フェルナンド・ボテロである。

現在90歳、26年ぶりに日本で開催される「ボテロ展 ふくよかな魔法」では、2020年制作の《モナ・リザの横顔》が展示されるなど、その旺盛な制作意欲はとどまる所を知らない。

ボテロが一躍脚光を浴びるようになったのは1963年。ニューヨーク近代美術館で《12歳のモナ・リザ》が展示された事に始まる。

当時のアメリカ現代美術界は、ポロックやニューマンに代表される、絵具をまき散らしたような意味のない無作為の表現を特徴とする「抽象表現主義」や、アンディ・ウォーホルに代表される大量消費社会のありふれた大衆文化を絵画に取り入れた「ポップ・アート」が全盛であったが、ポテロはデフォルメされてはいるがあくまでも対象物を具体的に描く「具象画」にこだわり続けた。

"ふっくら、豊満"という特徴には「不快だ、まるで食品会社のキャラクターのようだ」と批判する人もいたが、奥さんは替えても作風は全くブレることなく一切変えてない。この鈍感力は素晴らしい。

ポテロの作品を見ているとニコッと自然に笑みがこぼれてくる。それは風刺を伴う"パロディ"というよりも、個性を強調する"デフォルメ"だからだと思う。見てて可笑しい、それだけでいいのだ。

基本はそうだが、母国の麻薬密売やイラク兵への虐待に想を得た作品も発表する。

素晴らしい人間ドキュメンタリーである。

語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白さから映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白から映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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