鬼才が贈るフレンチロックミュージカル
2022年06月07日
アネット
© 2020 CG Cinéma International / Théo Films / Tribus P Films International / ARTE France Cinéma / UGC Images / DETAiLFILM / EUROSPACE / Scope Pictures / Wrong men / Rtbf (Télévisions belge) / Piano
【出演】アダム・ドライバー、マリオン・コティヤール、サイモン・ヘルバーグ
【監督】レオス・カラックス
"スパークス" 音楽とカラックス映像の競演
オープニングはスタジオ。このミュージカルの作曲を担当している "スパークス" の兄ロンが、演奏の準備をしている。調整室にいるのはレオス・カラックス監督で、演奏が始まるとそこにいたみんなが歌いながら一斉に外に出る。そこに主演の役者たちが加わり、隊列をつくり、衣装を纏い、準備が整い、本編が始まるという趣向。ちょっと、古風なイメージが思い浮かぶ。
舞台に立つソプラノ歌手のアン(マリオン・コティヤール)が、滔々と歌い上げるのは悲劇のアリア。死を暗示させる暗いオペラ。
別の劇場では、ヘンリー(アダム・ドライバー)が舞台に立つ。ボクサースタイルにガウンを纏い、挑発的に観客を煽る。スタンダップ・コメディアンとして絶大な人気を誇っているようだが、観客の怒りや不満が、緊張感に変わり、一気に弛緩して笑いに転じるという様子は、今ひとつピンとこない。
ふたりはファンからもメディアからも注目されるスターカップルで、煌びやかなセレブぶりが眩しく見えるが、ミュージカルとしての曲調は、どことなく不吉を暗示させる。
レオス・カラックス監督が、長編第1作となる『ポーイ・ミーツ・ガール』(1984年/日本公開88年)を発表したのは23歳の時。偏屈な性格で彼女に振られた男アレックスと、パリの生活に疲れた女ミレーユの出会いを描いたこの作品は、荒っぽい難解なストーリーに困惑させられ、分かりやすさとは程遠いが、全編に漂う斬新な魅力は、新たなる才能の誕生を印象づけ "早熟な才能" と期待を込めた評価を受けるデビュー作となった。
その後、『汚れた血』(1986年/日本公開88年)、『ポンヌフの恋人』(1991年/日本公開92年)を発表。同じ、ドニ・ラヴァン主演=アレックスという役名で "アレックス3部作" を完成させた。
キャリアは40年になろうとしているが、本作は長編7作目と寡作。そのカラックスも還暦を過ぎ…でも、全然、その尖っぷりは健在。ロックミュージカル仕立の怨念のような愛の物語。次第にグロテスクに変貌する話と映像は、感覚の受容量を超えてしまうかも? と、心配しないでもないが…。
語り手:覗き見猫
映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。
語り手:覗き見猫
映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。