岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

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ベストセラー昭和人情話の映画化

2022年06月01日

とんび

©2022 『とんび』 製作委員会

【出演】阿部寛、北村匠海、薬師丸ひろ子、杏、安田顕、大島優子、麻生久美子、麿赤兒、濱田 岳、宇梶剛士、尾美としのり、田中哲司、豊原功補、嶋田久作、村上淳、吉岡睦雄、宇野祥平、木竜麻生、井之脇海、田辺桃子
【監督】瀬々敬久

人と人との接触すら憚られる現在だからこそ 観て欲しい逸品

時は高度成長期の1962(昭和37)年、舞台は瀬戸内海に面した広島県備後市(=架空の市)。運送会社に勤める市川安男=ヤス(阿部寛)は、言葉使いも荒っぽく、喧嘩っ早い性格の男だが、誰からも好かれる気風を備えていた。

そんなヤスも最愛の妻・美佐子(麻生久美子)にめぐりあい、息子の旭=アキラが誕生するという幸せの絶頂にあった。

『とんび』は直木賞作家・重松清の同名小説の映画化で、その内容には自伝的な要素が多く含まれている。舞台となる架空の街・備後市は、岡山県出身の重松の近隣で同じ瀬戸内地方。細かいエピソードにも自身の体験が盛り込まれ、ヤスは父親がモデルになっていると明言している。

小説は2008年に刊行されているが、最初の映像化は2012年にNHKの土曜ドラマのスペシャル枠で前後編で放映された。

翌13年にはTBS(CBC)の日曜劇場の1〜3月クールで10回放映された。

どちらのドラマも観ているが、内容に大きなずれはなく、、原作に忠実な映像化だったと言える。

ちなみに、ヤスは堤真一、内野聖陽がそれぞれ演じ、成長したアキラは、池松壮亮、佐藤健が配役されている。

ヤスの仕事場での事故で、アキラを庇った美佐子は亡くなり、男でひとつの子育てが始まる。親の愛情を受けることなく育ったヤスには、子どもとの接し方がつい不器用になる。そんな時、周りにはそれを助けてくれる心優しき仲間がいた。

父親代わりなってくれる和尚の海雲(麿赤兒)、その息子で兄弟同然に育った照雲(安田顕)、姉貴分となって世話を焼いてくれる飲み屋の女主人たえ子(薬師丸ひろ子)、誰もが、"とんび" が生んだ ”鷹" の成長を熱く支える。

今や、絶滅危惧種のような昭和の匂いのする人間模様は、ともすれば、御涙頂戴型の下手な話に堕ちがちだが、抑制の効いた瀬々敬久監督の演出は職人芸。盛り沢山な逸話を詰め込んだ巧みな脚本構成で、役者の魅力を十二分に引き出すことにも成功している。

語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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