岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

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観客も翻弄されるサイコサスペンスの秀作

2022年05月25日

死刑にいたる病

©2022 映画「死刑にいたる病」製作委員会

【出演】阿部サダヲ、岡田健史、岩田剛典、中山美穂
【監督】白石和彌

殺人鬼を演じた阿部サダヲは最高のはまり役

コンスタントに、傑作・秀作を連打している白石和彌監督の最新作は、ミステリー作家・櫛木理宇の同名小説の映画化。脚本は、「そこのみにて光輝く」の高田亮。

死刑判決を受けた連続殺人事件の犯人からの手紙で面会に行った主人公が、事件を調べて真相に迫ると言えば、白石和彌監督が一躍注目を集めた「凶悪」を想起させる。

「死刑にいたる病」は、「凶悪」同様に残酷なシーンも少なくない衝撃作だが、連続殺人そのものより、人の心を意のままに弄ぶマインドコントロールの恐ろしさに焦点が合わされている。

人当たりの良いパン屋さんである犯人が、犠牲者となる高校生たちに近づき、信頼を勝ち得てから地獄に突き落とす過程のリアルな描写に眼が釘付けになる。そして、巧みなミスリードで観客も翻弄され、いつしか作り手の術中に嵌り、マインドコントロールされてしまうようなサイコサスペンス映画である。

「羊たちの沈黙」の影響も感じられるが、拘置所の面会室での透明なフェンスを巧みに利用した視覚的な演出が印象に残る。

連続殺人鬼を演じる阿部サダヲは、これ以上はないと思えるほどのはまり役で、映画の成功に大きく寄与している。彼に翻弄される主人公の大学生を演じる岡田健史も健闘している。

語り手:井上 章

映画鑑賞歴44年。出来る限り映画館で観ることをモットーとし、日本映画も外国映画も、新作も旧作も、ジャンルを問わず観てきたおかげか、2006年に、最初の映画検定1級の試験に最高点で合格しました。

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語り手:井上 章

映画鑑賞歴44年。出来る限り映画館で観ることをモットーとし、日本映画も外国映画も、新作も旧作も、ジャンルを問わず観てきたおかげか、2006年に、最初の映画検定1級の試験に最高点で合格しました。

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