岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

Meet somewhere

心に傷を負った人たちのリスタートの物語

2022年05月24日

今はちょっと、ついてないだけ

©2022映画『今はちょっと、ついてないだけ』製作委員会

【出演】玉山鉄二、音尾琢真、深川麻衣、団長安田(安田大サーカス)/高橋和也 ほか
【監督・脚本】柴山健次

シェアハウス、ネイチャリング、キャンプ、それは必要な場所

立花浩樹(玉山鉄二)は、バブルの時代、ネイチャリング・フォトグラファーとしてテレビ番組を持つほどの脚光を浴びていた。しかし、バブル崩壊によって、全てを失ってしまう。カメラマンとしての第一線からも退き、町工場に勤めて、背負ってしまった負債返済のため、その後の15年間を費やしてきた。

40歳を過ぎた今、母親(かとうかず子)の知り合いから依頼された肖像写真の撮影でファインダーを覗いた立花は、久く味合うことのなかった、写真を撮るという喜びに浸っている自分に気づく。

『今はちょっと、ついていないだけ』は、三重県生まれの女流・伊吹有喜が、2016年に発表した同名小説の映画化である。伊吹の小説では2010年に発表した『49日のレシピ』(タナダユキ監督/2013年)が、テレビドラマ化の後、映画化もされている。この作品も心に傷を負った人たちの喪失の辛さを描いており、本作にも通じるところがある。

リスタートを決意した立花は上京する。急ぎ足ではなく、ゆっくりとした歩みでも、確かな新たな一歩を踏み出す。そして、いつの間にか、かつて自分がいた場所に辿り着く。

立花と同じように、心に傷を負った人がいる。

元テレビマンの宮川(音尾琢真)は、現場からの配置転換で仕事への生き甲斐をなくし、ついには失職、家族からも疎外されてしまう。

美容師の瀬戸(深川麻衣)は、望んでついた仕事だったはずなのに、自分の領分を見失ってしまった。

お笑い芸人の会田(団長安田)は、マンネリの低迷から抜け出せないでいた。

そんな4人がひとつ屋根の下、シェアハウスに集う。

大自然の中にゆったりと身体を委ね、静かな時間が流れる。それを希求する人が増えているからこその、昨今のキャンプブームがある。

また、シェアハウスは、知らない他人が接点を持つことを意味する。そういう場所を持てないでいる人たちのための、ちょっと大胆な環境の変化。

立花の過去に言及する終盤、自分に借金の肩代わりを押しつけた元所属事務所の社長の巻島(高橋和也)との再会は、決着の場として必要かも知れないが、今ひとつ、すっきりしないのは、回想を繰り返す構成に難があったからで、その点は少し残念だ。

語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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