岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

Meet somewhere

路上に生きる犬たちを見つめたドキュメンタリー

2022年05月18日

ストレイ 犬が見た世界

© 2020 THIS WAS ARGOS, LLC

【出演】ゼイティン、ナザール、カルタル(犬たち) ほか
【監督】エリザベス・ロー

もうひとつの "ストレイ" 難民のストリートチルドレンが際立つ

世界で最も厳しい "動物保護法" を設けている国の一つにスイスがある。法律に貫かれている基本理念は、農家や肉屋、飼い主、科学者を含め、誰であっても「動物を不適切に、痛みや苦痛、危害、恐怖にさらすことは、許されない」というもので、動物保護法は「動物を扱う時は、動物の尊厳、つまり生来の価値を尊重しなければならない」と定めている。これは日本では憲法に準じる法律である。

しかし、これには大きな矛盾が存在していることに気づく。動物はこの法律によって苦痛からは逃れられるかも知れないが、その終末点には、人の手による殺処理が待ち構えている。

勿論、家畜とペットは別だという意見もあるだろうが、クローン化や便宜のための品種改良(悪)、断尾や断耳、断角、避妊処理、去勢にしたところで、動物に苦痛を与えていることに変わりはない。

スイスでもそういう議論は盛んで、規制強化に対する諸案は、国民投票に繰り返しかけられている。

最近、ペット先進国という言い方をよく耳にするが、その代表的な国は、スイスのほかに、ニュージーランド、デンマーク、スウェーデン、オーストリア、イギリスがあげられる。現在公開中の『ボブという名の猫2 幸せのギフト』は、ロンドンが舞台になっているが、イギリスには動物の飼育、利用に関する法令が70以上も定められている。

『ストレイ 犬が見た世界』は、"殺処分ゼロ" を定めた国トルコの首都・イスタンブールが舞台となる。

登場する犬たちには名前がある。群れないゼイフィン、人懐っこいナザール、愛らしきアイドルのような子犬カルタル。

カメラはローポジションで、犬たちの背後から、通行人や走行車を巧みにすり抜け追い続ける。あるようでない目的地へ、犬たちの行動は予測不能。人との触れ合いがあり、犬同士の小競り合いがある。ほぼ、ノーナレーションが貫かれた、ドキュメンタリーである。

題名の "ストレイ=Stray" は、それる、はぐれるという意味で、飼い主のいない野犬のことを指すが、もうひとつのストレイたち、度々登場するシリア難民のストリートチルドレンたちが際立つ。

語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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