岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

Meet somewhere

みんなで共同で飼っている地域犬。犬目線のドキュメンタリー

2022年05月18日

ストレイ 犬が見た世界

© 2020 THIS WAS ARGOS, LLC

【出演】ゼイティン、ナザール、カルタル(犬たち) ほか
【監督】エリザベス・ロー

人間と絶妙な距離感を保ちながら思い思いに生きている

トルコは犬猫殺処分ゼロの国だ。元々は野良犬や野良猫を徹底駆除していたのだが、2004年動物愛護法が制定され各自治体は保護が義務付けられた。そして2021年動物権利法に発展し違反者には懲役刑が科されることとなった。

イスタンブールの路上が住処の犬猫たち。まずはイスタンブール生まれのジェイダ・トルン監督により、7匹の猫たちとともに10センチの高さから猫目線で撮影したドキュメンタリー『猫が教えてくれたこと』(2016)が作られた。

そして香港生まれのエリザベス・ロー監督による、主人公犬ゼイティンを中心に犬目線で撮影したドキュメンタリーが『ストレイ 犬が見た世界』である。

犬が道路をゆったり歩いていたり寝そべっていたり人間を怖がる様子もなく、街の人たちも当たり前のようにごく自然に共存している。犬が道路上にいれば車はゆっくりと彼らを避けて通りクラクションを鳴らすこともない。あちこちにエサや水が置かれており、野良犬というよりもみんなで共同で飼っている地域犬という方が相応しい。

映画を見ていると耳にタグの付いた犬がいる。後から調べたら狂犬病ワクチンの接種が済んだ証明ということだ。不妊去勢手術を含めこれらは全部税金でまかなわれているわけで、動物保護の観点では日本よりだいぶ進んでいる。

犬目線からの人間模様がそれぞれ面白いが、中でもシリア難民の少年たちと犬の関係はとても素敵でとても重要だ。犬がいることによって自暴自棄にならないし優しい気持ちになれるのだ。

日本でも江ノ島や地元・佐久島などの「猫島」や世界的に有名な奈良の鹿など動物と共存している地域もあり人々の癒しになっているが、犬を放し飼いにしている地域は無い。日本は狂犬病予防法に基づき保護収容しているからだ。

イスタンブールの犬たちは人間と絶妙な距離感を保ちながら思い思いに生きている。優しさがスクリーンから滲み出ているのだ。

語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白さから映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白から映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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