岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

Meet somewhere

ブランドを支える裏方を描いたお仕事映画であり人生賛歌だ

2022年05月04日

オートクチュール

© 2019 - LES FILMS DU 24 - LES PRODUCTIONS DU RENARD - LES PRODUCTIONS JOUROR

【出演】ナタリー・バイ、リナ・クードリ、パスカル・アルビロ、クロード・ペロン、クロチルド・クロー
【監督・脚本】シルヴィー・オハヨン

優れた縫製技術には価値がある。ファッショニスタ必見!

シャネル、エルメス、ルイ・ヴィトン。パリ市内には伝統と革新を併せ持つ世界的なラグジュアリーメゾンが立ち並ぶが、その一角を占めるのがディオールだ。

本作はディオールのオートクチュール部門を舞台にブランドを支える裏方にスポットを当てたお仕事映画であると同時に、勝気で決して譲ることのなかった歳の離れた2人が、本当に大切なものを手に入れるまでを描いた人生賛歌である。

孤高のクチュリエ―ル(お針子)のエステル(ナタリー・バイ)と天性の縫製技術を持つ移民二世の不良少女ジャド(リナ・クードリ)。

2人の出会いは被害者と加害者ではじまり、そこから師匠と弟子、心が通じ合う親友、血の繋がらない母と娘と関係性がスペクトラムのように繋がりながら深まっていく。

ファッション業界というとヨウジヤマモトやコムデギャルソンの川久保玲などのデザイナーとか、パリコレクションのランウェイなど華やかな場面をイメージするが、それを実現するためには類まれなる縫製技術を持った職人が必要となる。

最近はファストファッションでもデザイナーズブランドと見紛うばかりの素敵なデザインも多いが、高価格のラグジュアリーブランドは縫製にひと手間もふた手間もかけている。私はもっぱらブランドファッションを古着で買うのだが、洗練されたデザインでなおかつ丈夫で長く着られる。優れた縫製技術にはそれだけの価値があるのだ。

エステルのような高級アパルトマンに住み洗練されたフランス語を話す階層と、ジャドのような移民が住む団地に暮らす粗っぽいフランス語を話す階層。この2つが共存しているパリの現実を背景に、多様性を受け入れプロフェッショナルとして認めあう姿は、欠点も多く不器用な生き方をしてきた2人だからこそ分かり合えるのだと描かれている。

映画の中には幻のドレスや貴重なスケッチ画も出てくる。ファッショニスタには応えられない映画だ。

語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白さから映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白から映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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