岐阜新聞 映画部

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老齢の同性愛を背景にしたサスペンス映画

2022年04月28日

ふたつの部屋、ふたりの暮らし

© PAPRIKA FILMS / TARANTULA / ARTÉMIS PRODUCTIONS - 2019

【出演】バルバラ・スコヴァ、マルティーヌ・シュヴァリエ、レア・ドリュッケール、ミュリエル・ベナゼラフ、ジェローム・ヴァレンフラン
【監督・脚本】フィリッポ・メネゲッティ

2人の女優の無邪気さはまるでティーンのよう

フランス革命で犯罪から除外された同性愛であったが、第2次大戦期のヴィシー政権で再び「反社会的な害毒」として刑法上の犯罪とされ、また1940年代後半には医学上は精神疾患と分類されるようになった。

本作の主人公ニナ(バルバラ・スコヴァ)とマドレーヌ(マルティーヌ・シュヴァリエ)は共に70代。1950年前後に生まれたと仮定すると長年密かに愛しあってきた大半の時期は、「犯罪で病気」とされてきたのだ。

宗教上でもタブーとされる中で勝気なニナは独身を通してきたが、優しいマドレーヌは不本意な結婚をし子どもを2人生んで育ててきた。夫はすでに亡くなっているがDVを受けていたようだ。

恋愛大国フランスで公表できない恋愛なんてさぞ辛かっただろう。

そんなフランスであったが、1982年ミッテラン社会党政権のとき、同性愛を犯罪としてきた刑法の条文が廃止される。

この辺りから徐々に同性愛に関する理解が深まり、1999年にPACS(連帯市民協約)が成立。性別に関係なく持続的共同生活が認められるようになった。簡単に言えば"同棲"以上"結婚"未満の新しい概念である。そして2013年ついに同性婚が合法化された。

ニナとマドレーヌの年老いたカップルにもようやく春が訪れるわけだが、それでもマドレーヌが娘や息子にカミングアウトするのは大変な勇気がいるのだ。タブーの時代を経験しているのでなおさらだ。

映画は脳卒中で倒れて介護がいることになったマドレーヌに対し、必死に会おうとするニナの大胆な行動がサスペンスフルに描かれていく。まるでヒッチコック映画のようで観ているこちらはハラハラし通しだ。

ニナのライバルはマドレーヌの介護士ミュリエル。ニナはひどい仕打ちをするが、ミュリエルもただ黙ってはいない。反撃に転じる。

老齢の同性愛を背景にしたサスペンス映画。2人の女優の無邪気さはまるでティーンのようである。

語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白さから映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白から映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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