岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

Meet somewhere

現代社会の不条理を暴く社会派映画

2022年04月25日

英雄の証明

©2021 Memento Production Asghar Farhadi Production ARTE France Cinema

【出演】アミール・ジャディディ、モーセン・タナバンデ、サハル・ゴルデュースト、マルヤム・シャーダイ、アリレザ・ジャハンディデ、サレー・カリマイ、サリナ・ファルハディ
【監督・製作・脚本】アスガー・ファルハディ

イスラム社会にもあるソーシャルメディアの功罪

舞台は多くの古代遺跡が存在する、イラン南西部ファールス州の首都シラーズ。冒頭、刑務所から出た(?)ラヒム(アミル・ソルタニ)は、義理の兄が働く遺跡の修復現場を訪ねる。ちなみにそこは世界遺産でもあるペルセポリスの遺跡。

ラヒムは借金の罪で服役しているのだが、この時、刑務所から出たのは ”休暇(?)" だとわかる。

イランでは、軽犯罪で収監された場合、囚人はこの "休暇" という制度を利用して、刑務所の外に出ることができる。ちょっと、ぴんとこない制度なので、驚くことしきりだが、日本でいうところの仮出所とも違っていて、家族の祝い事や、身内の病気や不幸があった時に利用できたり、特別な時期に家族と時間を過ごしたい時などにも取得できる。

そんな時、婚約者のファルコンデ(サハル・ゴルデュースト)が、偶然にも17枚の金貨の入ったバッグを拾う。借金の返済さえできれば、その日にでも出所できる…貴金属店での金貨の換金を試みるが、相場の下落で、返済額には届かない事実に直面する。

ラヒムは罪悪感から、金貨を落とし主に返すことを決意するのだが、ここでラヒムが取った行動は、張り紙を作って落とし主からの連絡を待つというもの(?)…これがちょっと不思議ではある。

そして、落とし主と名乗る女性から、指定した連絡先の刑務所のラヒムのもとに電話が入る。

落し物の受け渡しはラヒム不在の家で行われ、金貨は無事に持ち主のともに渡るのだが、ラヒムの行為は、周囲の人々から善行と囃し立てられ、次第に賞賛を浴び、英雄へと祭り上げられて行く。

監督は『別離』(2011=日本公開12年)、『セールスマン』(2016=日本公開17年)で、2度のアカデミー外国語映画賞(現・国際長編映画賞)に輝くなど、国際的にも高い評価を受けているアスガー・ファルハディで、緻密な人物造形と、スリリングな語り口は、実に見事で、イスラム世界においても、何ら変わることのない、現代社会のソーシャルメディアの功罪と不条理を強烈に浮かび上がらせている。

敢えて、疑問符を入れた部分が、戸惑いを感じた部分で、要らぬお節介ではありますが、これを引きずると乗り遅れるのでご用心!

語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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