岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

Meet somewhere

チャーミングなご両親がとっても素敵なセルフドキュメンタリー

2022年04月19日

ぼけますから、よろしくお願いします。~おかえり お母さん~

©2022「ぼけますから、よろしくお願いします。~おかえり お母さん~」製作委員会

【監督・撮影・語り】信友直子

102歳のお父さん、長生きしてください

2018年公開の前作を配信で観てから時を置かずに本作を観たこともあり、上映時間3時間23分(前作1時間42分+今作1時間41分)という体感的にはフレデリック・ワイズマン並みの映画を観た充実感だ。

本作は映像作家の信友直子監督(昭和36年生)が、広島県呉市に住む認知症の母(昭和4年生)と耳が遠い父(大正9年生)の日常を、小型カメラで自ら撮影し自らの身辺の事実をドキュメントした、いわゆるセルフドキュメンタリー映画である。

信友さんが両親を家庭用小型カメラで撮り始めたのは2001年。お母さんがアルツハイマー型認知症だと診断された2014年から本格的に撮影が始まった。

いくら娘といえども普通カメラを向けられれば意識してしまう。特に本作は隠し撮りでなく、信友監督がカメラを胸の前に構えて喋りかけながらの撮影なので意識するのは当たり前だ。「ありのまま」の父と母でなく、カメラを向けられた日常なのだ。

次第に慣れてくるとは言え、きっとお父さんもお母さんもカメラの前では振る舞いも違ったであろう。張り合いもあったし生きがいでもあっただろう。そこがいいのである。

そしてほぼ信友監督からの目線で撮られていることで、私たちも信友家の一員としてご両親と生活しているような感覚になる。チャーミングで優しいお父さんとお母さん。客観的に観るのでなく一緒に笑ったり泣いたり心配したり、バーチャルな体験ができるのだ。

信友監督が乳がんになったとき、「お母さんの垂れたボインでよかったら、いつでもあげるんじゃけどね~」と笑わしたり、認知症が進んで「私はもう死にたい!包丁持ってきて!みんなの邪魔になるけん死んじゃる!」と泣き叫んだら、普段は優しいお父さんが「感謝していきろ」と仁義なき戦いみたいな広島弁で怒ったり、素敵なシーンがてんこ盛りだ。

親子3人が2人になったが、102歳のお父さん、長生きしてください。

語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白さから映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白から映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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