岐阜新聞 映画部

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理屈抜きに楽しい韓国発ケイパームービー

2022年04月05日

パイプライン

©2021 [CJ ENM, GOM PICTURES, M.o.vera Pictures] All Rights Reserved.

【出演】ソ・イングク、イ・スヒョク、ウム・ムンソク、ユ・スンモク、テ・ハンホ、ぺ・ダビン
【監督・脚本】ユ・ハ

二転三転のストーリー、疑心案義の相関関係

本作の映画評の参考にしようとネットで調べていたら、2016年「地中パイプラインから石油を盗む事件が韓国で連続発生」という記事を見つけた。日本では入浴施設などのバイパス配管による不正使用が思い浮かぶが、韓国では実際にあった事件。ところ変われば犯罪の内容も変わるものだ。

『パイプライン』と聞いて真っ先にイメージするのはベンチャーズがカヴァーしたエレキ曲だが、この映画のタイトルでこの曲がかからなければ詐欺だとばかりに、"デンデケデケデケデケデケデケデケ"とカッコよく鳴り響く。ずるいぐらいにベタな選曲だが悔しいぐらいに映画に合っている。

本作はそれぞれ専門的知識を有するプロの犯罪者集団が、難攻不落な標的に向かって緻密かつ大胆な方法で獲物を狙っていく"ケイパームービー"というジャンルに属するが、盗むものがパイプラインの重油というのが目新しい。

映画はケイパームービーの王道に沿って進んでいく。まずは冒頭で「今回の獲物=重油」を紹介、専門的な犯罪者集団6人が集まってきて計画を練る第1段階、それぞれの技術を駆使して実行する第2段階、仲間割れがおこり警察からの捜査も厳しい第3段階、もつれた糸を解きほぐすようなラスト。見事なまでにオーソドックスな筋立てだ。

そして6名の犯罪者の個性豊かなキャラクター。盗油作戦をリードする冷静でカッコイイ穿孔技術者“ピンドリ”(ソ・イングク)をはじめ、ちょっと太めの怪力の持ち主や、場を和ませるコメディーリリーフなど、こちらも見事なまでにオーソドックスなキャラ付けだ。

二転三転のストーリー展開や敵か味方か疑心案義の相関関係など、いささかも飽きるところはなく物語は進んでいく。

ケイパームービーは痛快さを求めて観る人が多いと思うが、一番の黒幕を見事に追い落とし逆襲を果たすところはカタルシスを覚えて愉快痛快だ。

理屈抜きに楽しい韓国発犯罪娯楽映画である。

語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白さから映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白から映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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