岐阜新聞映画部映画館で見つけた作品愛なのに B! 城定秀夫と今泉力哉、二人の良さが完璧に融合した傑作 2022年03月24日 愛なのに ©2021「愛なのに」フィルムパートナーズ 【出演】瀬戸康史、さとうほなみ、河合優実、中島歩、向里祐香、丈太郎 【監督】城定秀夫 城定監督の職人技と登場人物が愛おしくてたまらない 数々の傑作を放ち、昨年の「街の上で」が最高に素晴らしかった今泉力哉監督。ピンク映画の傑作を数々監督し、昨年「アルプススタンドのはしの方」で一気にメジャーへと躍り出た城定秀夫監督。私の大好きな二人が互いの脚本を交換しあって監督するコラボレーション企画「L/R15」の1本。当然、期待値はハネ上がる。そして出来上がった本作はその期待値を軽々と超えてきた。それもそのはず、今泉力哉と城定秀夫の良さが見事に融合しているのだ。今泉力哉の生み出す世界観を完全に維持しているにもかかわらず、随所に感じる特徴的な城定演出。まずはその城定演出から語りたい。 城定秀夫監督の演出は長回しだ。それは今泉力哉監督も同じ。しかし、今泉監督がフィックス長回しなのに対して、城定監督は人物もカメラも動き回る。フレームを人物が出入りし、手持ちを駆使した長回し、キャラクターの気持ちとリンクしたカメラワーク。今泉監督の作り出すキャラクターが城定演出によって躍動する。特に濡れ場の演出は凄い。冷たいシーンでは青色照明と水槽を巧みに使い、引き画で捉える。一方、気持ちが高まっているときは暖色の照明でライティングし、手持ちのアップを多用する。おかげで前者は冷え切った心が、後者は二人の息遣いや熱っぽさが伝わってくる。 そして、城定秀夫監督最大の特徴が眼鏡っ子。城定作品=眼鏡っ子といってもいいくらいの特徴だ。毎度、どこか屈折した思いを抱えるキャラクターが眼鏡をかけて登場し、彼女自身の変化や彼女をとりまく関係性の変化が物語を大きく動かすことになる。城定作品は“眼鏡っ子”にも注目なのだ。 次に今泉監督の作り出したキャラクターについて。今回も今泉ワールド全開で誰もがみんな偏っている。とても優柔不断、とても不誠実、とても一途、そしてとても・・・。すべての性格が誰かを傷つけてはいるものの、誰かを救ったり背中を押したりもする。ちょっとズレた彼らの言動にクスクス笑いながら物語は進んでいく。それでも誰のことも否定しない温かさに満ちていて、どのキャラクターも魅力的なのだ。 そして最後にそんな魅力的なキャラクターを好演したキャスト陣について。人柄の良さが伝わる瀬戸康史、一途な魅力が溢れる河合優実、“心のままに”行動する憎めなさがあるさとうほなみ、残念なイケメンがハマりすぎている中島歩、眼鏡っ子の向里祐香。もう、全員愛おしくてたまらない。そんな素敵な1本だ。 語り手:天野 雄喜 中学2年の冬、昔のB級映画を観たことがきっかけで日本映画の虜となり、現在では24時間映画のことを考えながら過ごしています。今も日本映画鑑賞が主ですが外国映画も多少は鑑賞しています。 100% 観たい! (18)検討する (0) 語り手:天野 雄喜 中学2年の冬、昔のB級映画を観たことがきっかけで日本映画の虜となり、現在では24時間映画のことを考えながら過ごしています。今も日本映画鑑賞が主ですが外国映画も多少は鑑賞しています。 2024年09月26日 / どら平太 日本映画黄金時代を彷彿とさせる盛りだくさんの時代劇 2024年09月26日 / 潜水艦コマンダンテ 誇り高き決断 助けを求める人はもはや敵ではなく、ただの人間だ 2024年09月26日 / 潜水艦コマンダンテ 誇り高き決断 海の男たちが下す決断を描くヒューマンドラマ more 2018年05月30日 / 名古屋シネマテーク(愛知県) 作り手も観客も映画と真剣に向き合える映画館 2023年06月28日 / 神戸映画資料館(兵庫県) 長年眠っていた貴重なフィルム作品を発掘・上映する。 2024年09月26日 / 【思い出の映画館】シネマスクエアとうきゅう(東京都) 歌舞伎町のど真ん中。贅沢な時を過ごせた映画館 more
城定監督の職人技と登場人物が愛おしくてたまらない
数々の傑作を放ち、昨年の「街の上で」が最高に素晴らしかった今泉力哉監督。ピンク映画の傑作を数々監督し、昨年「アルプススタンドのはしの方」で一気にメジャーへと躍り出た城定秀夫監督。私の大好きな二人が互いの脚本を交換しあって監督するコラボレーション企画「L/R15」の1本。当然、期待値はハネ上がる。そして出来上がった本作はその期待値を軽々と超えてきた。それもそのはず、今泉力哉と城定秀夫の良さが見事に融合しているのだ。今泉力哉の生み出す世界観を完全に維持しているにもかかわらず、随所に感じる特徴的な城定演出。まずはその城定演出から語りたい。
城定秀夫監督の演出は長回しだ。それは今泉力哉監督も同じ。しかし、今泉監督がフィックス長回しなのに対して、城定監督は人物もカメラも動き回る。フレームを人物が出入りし、手持ちを駆使した長回し、キャラクターの気持ちとリンクしたカメラワーク。今泉監督の作り出すキャラクターが城定演出によって躍動する。特に濡れ場の演出は凄い。冷たいシーンでは青色照明と水槽を巧みに使い、引き画で捉える。一方、気持ちが高まっているときは暖色の照明でライティングし、手持ちのアップを多用する。おかげで前者は冷え切った心が、後者は二人の息遣いや熱っぽさが伝わってくる。
そして、城定秀夫監督最大の特徴が眼鏡っ子。城定作品=眼鏡っ子といってもいいくらいの特徴だ。毎度、どこか屈折した思いを抱えるキャラクターが眼鏡をかけて登場し、彼女自身の変化や彼女をとりまく関係性の変化が物語を大きく動かすことになる。城定作品は“眼鏡っ子”にも注目なのだ。
次に今泉監督の作り出したキャラクターについて。今回も今泉ワールド全開で誰もがみんな偏っている。とても優柔不断、とても不誠実、とても一途、そしてとても・・・。すべての性格が誰かを傷つけてはいるものの、誰かを救ったり背中を押したりもする。ちょっとズレた彼らの言動にクスクス笑いながら物語は進んでいく。それでも誰のことも否定しない温かさに満ちていて、どのキャラクターも魅力的なのだ。
そして最後にそんな魅力的なキャラクターを好演したキャスト陣について。人柄の良さが伝わる瀬戸康史、一途な魅力が溢れる河合優実、“心のままに”行動する憎めなさがあるさとうほなみ、残念なイケメンがハマりすぎている中島歩、眼鏡っ子の向里祐香。もう、全員愛おしくてたまらない。そんな素敵な1本だ。
語り手:天野 雄喜
中学2年の冬、昔のB級映画を観たことがきっかけで日本映画の虜となり、現在では24時間映画のことを考えながら過ごしています。今も日本映画鑑賞が主ですが外国映画も多少は鑑賞しています。
語り手:天野 雄喜
中学2年の冬、昔のB級映画を観たことがきっかけで日本映画の虜となり、現在では24時間映画のことを考えながら過ごしています。今も日本映画鑑賞が主ですが外国映画も多少は鑑賞しています。