岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

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中国の現代社会のある一面を垣間見られた映画

2022年03月14日

こんにちは、私のお母さん

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【出演】ジア・リン、チャン・シャオフェイ、シェン・トン、チェン・フー、リウ・ジア
【監督】ジア・リン

コテコテベタベタなドタバタ喜劇。雑さや陳腐さが逆に新鮮

私が中国映画を観るトリガーは、チェン・カイコーやジャ・ジャンクーなどの信用ある監督作や国際映画祭で受賞するなど高い評価を受けている作品である。玄人筋が認める映画なのでカスを引くことは少ない。

本作のホームページによるキャッチーは、"興行収入約900億円を記録、中国全土が笑って泣いたパラレルワールド・コメディ!"で、一応"上海国際映画祭新人監督賞・主演女優賞"受賞だ。

マニア向けの作品でなく中国の人々がこぞって観た映画って、どんな感じで何が受けたのかなとイソイソ考えながらCINEXの暗闇に身を投じた。

展開されるのは、欧米の優れたコメディ映画みたいなエスプリとかアイロニー、風刺やペーソスでなく、コテコテベタベタなドタバタ喜劇。ハゲとかデブとかで笑わせるゲスないじりや、ウンコや下痢などの下ネタ、オチのわかる幼稚なギャグなど、笑うに笑えないシーンが連発する。

しかしこれは批判しているのではない。"笑うに笑えない"のが面白いのだ。

「自分はウェルメイドで、教養のいるコメディ映画が好き」などと偉そうにしていたが、全席期のドリフの下ネタや延々と続くよしもと新喜劇のベタなギャグ同様、この映画の雑さや陳腐さが、逆に新鮮に思えてきたのだ。

喜劇女優のジア・リンが自身の母との実話を元に脚本・監督・主演しているが、迷惑をかけ通しだったお母さんに「いまさらだけど親孝行したい」との思いがいっぱい詰まった感謝の映画だ。

映画は彼女が俳優養成の大学へ入学した2001年から生まれる前の1981年にタイムスリップし、お母さんを、ジア・リンが思う幸せな方向に向かわせようとする。そのドタバタぶりが面白い。

そして後半は藤山寛美がいた頃の松竹新喜劇のような人情喜劇になっていき、泣かせに泣かせる。そこらへんは四の五の言わず物語に身を任せればいい。

中国の現代社会のある一面を垣間見られた映画だ。

語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白さから映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白から映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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