残念なイケメン、中島歩のキャラに大爆笑

私の2021年日本映画ベストワン『街の上で』の中で、劇中映画の衣裳係・城定イハが主演の荒川青に名字を説明するとき、「ジョウジョウ。城定秀夫監督と同じ」というセリフがある。「マニアックだなあ」と一人悦に入っていたが、こういうコラボが出来るとは思ってもみなかった。

恋愛映画の名手・今泉力哉さん（41歳）の脚本を、ピンク映画界の鬼才・城定秀夫さん（46歳）が監督した本作は、2人の個性が絶妙に混ざり合い最良の形で結実した、面白くて可笑しい最高の映画となった。

物語の骨格は今泉リアリティの世界であり、登場人物のキャラは全て今泉モデルである。カッコよく決める奴など一人もおらず、みんなどこかズレていて、無様で滑稽。私が好きで好きでたまらない今泉ワールドの住人たちだ。

さあその脚本を城定さんがどう肉付けし人物をどう動かすかだが、さすがの職人監督。味わいをいささかも損ねることなく、見事に城定色を出している。気持ちがいい。

基本長回しは一緒だが、今泉映画ではフィックスで動かない絵柄が、城定映画ではシーンとシーンの間に走ったり動いたり、チョットしたアクション場面が挟まる。これが実に効果的。長めのセリフはそのままに、全体がワサワサした雰囲気は新鮮だ。

そして最大の違いは、濡れ場があることにつきる。

この映画のレイティングはR15+。15歳以上なら中学生でも観られるわけだが、そこら辺の描写のさじ加減はさすが城定監督、映倫の審査基準を熟知しているのだ。私にとっては、これでも充分エッチなのだが。

真面目で奥手な古本屋の店主を演じる瀬戸康史は、今泉キャラそのもの。こんなふうに女子高生の岬（河合優実）から惚れられるなんて羨ましい限りだ。

最高なのは中島歩。残念なイケメンを演じたら当代随一の彼だが、「セックスが下手」というキャラには涙が出るほど大爆笑した。

奇跡のコラボ、満点の成果である。