岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

Meet somewhere

アメリカの片田舎の人間模様、その悲喜劇

2018年02月13日

スリー・ビルボード

©2017 Twentieth Century Fox Film Corporation

【出演】 フランシス・マクドーマンド、ウディ・ハレルソン、サム・ロックウェル、ジョン・ホークス、ピーター・ディンクレイジ
【監督・脚本】マーティン・マクドナー

アカデミー賞獲得なるか、有力候補作

 時は現代、場所はミズーリの片田舎。娘を殺された母親が、一向に捜査が進展せず不甲斐ない地元警察に腹を立て、道路沿いに大きな3つの立て看板に広告を出す。署長の実名を挙げ捜査はどうなっているのか、と。これがタイトルとなっている「スリー・ビルボード」。
 監督は英国出身のマーティン・マクドナー。前に『ヒットマンズ・レクイエム』が各国の映画祭で受賞し、注目を集めた。ベルギーの観光都市ブルージュを舞台としたイギリス人の殺し屋のブラックなコメディ(原題は「In Bruges」)で秀作だった。次いでアメリカで撮った『セブン・サイコパス』はアイデア倒れの散漫な印象。しかし、本作は今年のアカデミー賞有力候補と称せられるだけの魅力が十分にある。
 単純なハリウッド映画と一線を画すのは、田舎町の人間模様の描写だ。誰もが顔馴染みで、家族構成から性格や悪行まで互いにすべてお見通しの狭い世界。腹の底まで知り尽くしていると思った隣人や友人が、時に意外な一面を見せる。母親の怒りに端を発した騒動がメインの展開ではあるものの、話がどう転がっていくか全く予想がつかない脚本の妙にうならされる。
 地元警察からの圧力に抵抗する若い広告代理店の男や、やる気のない地元警察官たちも好演だが、やはり主演の母親役フランシス・マクドーマンドの存在感が光る。コーエン兄弟の傑作『ファーゴ』が最も印象に残るが、本作でも時に母親らしい愛情の瞬間を演じてみせる。

『スリー・ビルボード』はTOHOシネマズ岐阜、TOHOシネマズ モレラ岐阜、大垣コロナシネマワールドほか、全国ロードショー。

語り手:シネマトグラフ

外資系資産運用会社に勤務。古今東西の新旧名画を追いかけている。トリュフォー、リヴェット、ロメールなどのフランス映画が好み。日本映画では溝口と成瀬。タイムスリップして彼らの消失したフィルムを全て見たい。

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語り手:シネマトグラフ

外資系資産運用会社に勤務。古今東西の新旧名画を追いかけている。トリュフォー、リヴェット、ロメールなどのフランス映画が好み。日本映画では溝口と成瀬。タイムスリップして彼らの消失したフィルムを全て見たい。

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