岐阜新聞映画部映画館で見つけた作品先生、私の隣に座っていただけませんか? B! 漫画と現実が交錯する夫婦の心理戦 2022年01月05日 先生、私の隣に座っていただけませんか? ©2021「先生、私の隣に座っていただけませんか?」製作委員会 【出演】黒木華、柄本佑/金子大地、奈緒/風吹ジュン 【監督・脚本】堀江貴大 もうひとりの先生(新谷)の登場で物語は複雑化し加速する 漫画家の仕事部屋。机に向かい軽快にペンを走らせる佐和子(黒木華)。側には同じくペンをとる俊夫(柄本佑)がいる。息の合った仕事ぶり。 完成した原稿を編集者の桜田千佳(奈緒)に渡す佐和子。それは連載最終回分で、仕事を終えた安堵感が漂う。3人には慣れ親しんだ空気感が存在する。 かつては漫画作家であった俊夫が筆を止め、妻である佐和子の助手をしていることを千佳はやんわりと、でも少々毒のある言葉で揶揄する。そんなふたりのやりとりを訳知り顔で観ている佐和子。おもむろに「駅まで送ってあげたら」と俊夫に提案する。 佐和子は俊夫と千佳の関係を明らかに疑っている。部屋を出たふたりを追おうとした時、携帯の着信がそれを止める。 『先生、私の隣に座っていただけませんか?』は、漫画家夫婦の心理戦を描く映画だが、軽妙さの中に意味深い伏線を用意し、映画の色を予告するこのオープニングが素晴らしい。 田舎で一人暮らしをしている母親(風吹ジュン)が交通事故で足に怪我をした知らせを受け、佐和子と俊夫はペットの陸亀とともに、実家に帰って来る。 佐和子は運転免許取得のため、教習所通いを始めるが、同時に新作漫画のネーム(下書)の制作にも励む。毎日、教習所の送り迎えをする俊夫は、佐和子の変化に違和感を抱く。そして、新作のネームを読んでしまう。そこに描かれていたのは…。 物語はそのネーム=漫画の世界と、現実が交錯する形で描かれる。それは佐和子の妄想=創作なのか? 俊夫の様子からはあながち虚構ではないと推察できる。この夫婦間の心理戦がサスペンススリラーのアクセントになっている。 適材適所のキャスティングは申し分なく、余分な台詞を排し、仕草や目線や表情で展開するアンサンブル演技が秀抜。 巧妙なアイデアのオリジナル脚本を破綻なく仕上げた、堀江貴大監督の演出力も評価したい。 語り手:覗き見猫映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。 100% 観たい! (6)検討する (0) 語り手:覗き見猫映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。 2024年09月13日 / 幻の光 デビュー作から並みの監督でないことはよくわかる 2024年09月12日 / 密輸 1970 勝つのは誰だ?四つ巴のクライム・アクションムービー 2024年09月10日 / 幸せのイタリアーノ 嘘つきシニョーレと車椅子セニョリータの大人のラブストーリー more 2020年04月15日 / シネマトーラス(北海道) 流浪の映画青年が作り上げた北の映画館 2022年05月25日 / シアターキノ(北海道) 上映作品を選ぶにも妥協は許さない…北の都の映画館。 2019年02月27日 / 延岡シネマ(宮崎県) 夏休み…映画館で買ってもらったお菓子の味を思い出す。 more
もうひとりの先生(新谷)の登場で物語は複雑化し加速する
漫画家の仕事部屋。机に向かい軽快にペンを走らせる佐和子(黒木華)。側には同じくペンをとる俊夫(柄本佑)がいる。息の合った仕事ぶり。
完成した原稿を編集者の桜田千佳(奈緒)に渡す佐和子。それは連載最終回分で、仕事を終えた安堵感が漂う。3人には慣れ親しんだ空気感が存在する。
かつては漫画作家であった俊夫が筆を止め、妻である佐和子の助手をしていることを千佳はやんわりと、でも少々毒のある言葉で揶揄する。そんなふたりのやりとりを訳知り顔で観ている佐和子。おもむろに「駅まで送ってあげたら」と俊夫に提案する。
佐和子は俊夫と千佳の関係を明らかに疑っている。部屋を出たふたりを追おうとした時、携帯の着信がそれを止める。
『先生、私の隣に座っていただけませんか?』は、漫画家夫婦の心理戦を描く映画だが、軽妙さの中に意味深い伏線を用意し、映画の色を予告するこのオープニングが素晴らしい。
田舎で一人暮らしをしている母親(風吹ジュン)が交通事故で足に怪我をした知らせを受け、佐和子と俊夫はペットの陸亀とともに、実家に帰って来る。
佐和子は運転免許取得のため、教習所通いを始めるが、同時に新作漫画のネーム(下書)の制作にも励む。毎日、教習所の送り迎えをする俊夫は、佐和子の変化に違和感を抱く。そして、新作のネームを読んでしまう。そこに描かれていたのは…。
物語はそのネーム=漫画の世界と、現実が交錯する形で描かれる。それは佐和子の妄想=創作なのか? 俊夫の様子からはあながち虚構ではないと推察できる。この夫婦間の心理戦がサスペンススリラーのアクセントになっている。
適材適所のキャスティングは申し分なく、余分な台詞を排し、仕草や目線や表情で展開するアンサンブル演技が秀抜。
巧妙なアイデアのオリジナル脚本を破綻なく仕上げた、堀江貴大監督の演出力も評価したい。
語り手:覗き見猫
映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。
語り手:覗き見猫
映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。