ランス・ヘンリクセンのクソっ親父っぷり。これに耐えられるか?
2021年12月23日
フォーリング 50年間の想い出
© 2020 Falling Films Inc. and Achille Productions (Falling) Limited· SCORE © 2020 PERCEVAL PRESS AND PERCEVAL PRESS INC. · A CANADA - UNITED KINGDOM CO-PRODUCTION
【出演】ランス・ヘンリクセン、ヴィゴ・モーテンセン、 ローラ・リニー
【監督】ヴィゴ・モーテンセン
自分勝手でわがままな父親に認知症がプラスされた
今年5月に公開された『ファーザー』で、アンソニー・ホプキンス(83歳)が演じた認知症の父親アンソニーは、過去と現実が混同され家族を困らせてはいたが、基本的には「老いては子に従え」という設定である。
一方本作でランス・ヘンリクセン(81歳)が演じた認知症の父親ウィリスは、頑固で攻撃的で罵詈雑言を浴びせ続けるという役柄だ。
ヴィゴ・モーテンセンの初監督作品は、自身の父親との関係を参考にした半自伝的な内容であるとのこと。映画を観ている限り、こんな自分勝手でわがままでトラブルメイカーだった父親を、一旦は同居しようと試みた。よくもまあ許せたものだ。
父親ウィリスの言葉遣いの下品さ汚さは、字幕を通しても差別的でお下劣で不愉快極まりない。性的侮蔑言葉の「Fワード」をはじめとして、「クソ」「ホモ」「オカマ」など英語におけるありとあらゆる罵詈雑言が、言葉の端からドンドン出てくる。
映画自体は奇をてらわない落ち着いた演出で、回想シーンも上手にはまっているのだが、父親の心無い言葉はトラウマになりそうなインパクトだ。
当然ながらこれは意図的な演出であり、観客にはどこまでいったら「堪忍袋の緒が切れる」のか試されているのだ。人間の小さい私なんかは、映画が始まってから20分が限界だ。
映画は、この父親の保守性や不寛容さを際立たせるためなのか、ヴィゴ・モーテンセン演じるジョンをゲイの設定としている。若干の文句があるのは、ジョンのパートナー(夫)を中国系、養女をヒスパニック系とし、おまけに妹の息子はゲイで娘はレズビアンとしたこと。LGBTQや人種など多様性を表しているのはわかるが、ここまであざとく類型化すると、わざとらしさしか感じられない。さらに後半は冗長気味で長い。
しかしながらランス・ヘンリクセンのクソっ親父ぷりは見事である。将来こんな認知症の老人にだけにはなりたくない。反面教師なのだ。
語り手:ドラゴン美多
中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白さから映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。
語り手:ドラゴン美多
中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白から映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。