岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

Meet somewhere

俊英・濱口竜介監督の珠玉の短編集

2021年12月20日

偶然と想像

©︎ 2021 NEOPA / Fictive

【出演】(第1話)古川琴音、中島歩、玄理/(第2話)渋川清彦、森郁月、甲斐翔真/(第3話)占部房子、河井青葉
【監督】濱口竜介

偶然を装った仕掛=設定で交わされる濃密な会話劇

今年の7月、第74回カンヌ映画祭で濱口竜介監督の『ドライブ・マイ・カー』が脚本賞を受賞したことは記憶に新しい。そして、現在、アメリカで先行して発表されている各地の批評家賞でも、ニューヨークをはじめとして、作品、脚本、主演男優賞の受賞が続いている。そして、この後、発表が予定される映画賞でも、ノミネートのニュースが毎日のように届いている。

『偶然と想像』は、3月に開催された第71回ベルリン映画祭で銀熊賞(審査員グランプリ)を受賞し、濱口作品の受賞ラッシュの先駆けとなった。

映画は3つの短編からなるオムニバスである。

第一話『魔法(よりもっと不確か)』 モデルの芽衣子(古川琴音)とヘアーメイクのつぐみ(玄理)の仕事帰りのタクシー車内での会話。つぐみが最近出会った男のことを話す。芽衣子は聞き役に徹し、和やかな女子話の雰囲気だが、ここにはある "偶然" があって、一変、芽衣子は行動(=想像)に移る。

第二話『扉は開けたままで』 フランス文学を教える大学教授の瀬川(渋川清彦)と、ゼミの学生だったことがある奈緒(森侑月)との教員室での会話。下心と神経質な警戒心が交錯するスリリングな時間が、ある "偶然" で揺らぐ。

第三話『もう一度』 高校の同窓会に出席するため、仙台に帰省した夏子(占部房子)と、駅のエスカレーターですれ違う旧友のあや(河井青葉)の "偶然" の出会いと、不明の現在と懐かしい過去を継なぐ会話。次第に浮かび上がる変化。

共通するのは、かなり濃厚な会話劇であることと、それぞれの関係性の中に "偶然" が介在すること。物語によって生まれた、あるいは変化した日常が浮かび上がること。

"偶然" を装った仕掛で交わされる会話劇は、思わず身を乗り出す濃厚な時間を出現させる。

"想像" が、儚く揺らいでいるのは、観るものに委ねられた "想像への種" だからかも知れない。

語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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