岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

Meet somewhere

アート作品を背負った男の波乱の物語

2021年12月14日

皮膚を売った男

© 2020 – TANIT FILMS – CINETELEFILMS – TWENTY TWENTY VISION – KWASSA FILMS – LAIKA FILM & TELEVISION – METAFORA PRODUCTIONS - FILM I VAST - ISTIQLAL FILMS - A.R.T - VOO & BE TV

【出演】モニカ・ベルッチ、ヤヤ・マヘイニ、ディア・リアン、ケーン・デ・ボーウ、ヴィム・デルボア
【監督】カウテール・ベン・ハニア

曖昧な価値観の裏側に蠢く欲望たち

シリア内戦下、住んでいたラッカから、隣国のレバノンへ難民として逃れたサム(ヤヤ・マヘイニ)は、シリアにとどまる恋人のアビール(ディア・リアン)が、家族が用意した裕福な男との結婚話を勝手に勧められ、ベルギーのブリュッセルへ移住してしまうことを知る。

苦境に立たされたサムは、偶然出会った芸術家からある提案を受ける。

現代アートの巨匠として、何かと世間を騒がせているジェフリー(ケーン・デ・ボーウ)には、その名声の陰によからぬ噂がつきまとう。

しかし、サムは金と自由のため、自らの背中を差出す決断をする。

美術界を取りまくお金の話は、ともすれば、芸術の本質を度外視した別の次元で論じられることが多い。

例えば、◯◯オークションで、誰それの絵画がうん億円で落札されたとか…。

まもなく、CINEXでも上映される『ダ・ヴィンチは誰に微笑む』は、こういう下世話な美術界の裏話のドキュメンタリーですが、まあ、それは別の話。

サムは背中にアート作品としての "タトゥー" を施され、まさに、作品と一心同体となる。

作品(=サム)は美術館に展示され、世界を自由に巡回することになる。作品(=サム)は、丁重に扱われ、VIP待遇が用意される。世界はまさに一変、彼の望みであった恋人にも会いに行ける。すべてが順風のはずだったが…。

『皮膚を売った男』は、内戦、難民といった問題からは遠く離れる。そもそもサムは政治犯でも思想犯でもなく、話は個人に集約する。

奇想の物語は、ベルギーの芸術家ヴィム・デルボアが発表したタトゥー作品「TIM」から着想を受け、チュニジア人の女流カウテール・ベン・ハニア監督が、自らオリジナル脚本として書き上げた。アートの世界の曖昧な価値観をめぐる表裏の物語は、痛くて、スリリングで、実に面白い。

個人に購入された「TIM」は何処にあるのか?

語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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