岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

Meet somewhere

今泉力哉監督作品《その5》

2022年01月19日

かそけきサンカヨウ

©2020 映画「かそけきサンカヨウ」製作委員会

【出演】志田彩良/井浦 新、鈴鹿央士、中井友望、鎌田らい樹、遠藤雄斗、石川恋、鈴木咲、古屋隆太、芹澤興人、海沼未羽、鷺坂陽菜、和宥、辻凪子、佐藤凛月、菊池亜希子/梅沢昌代、西田尚美/石田ひかり
【監督】今泉力哉

清楚な人を見つめた恋愛映画の新境地

"かそけき" は漢字で書くと、"幽き" となり、いまにも消えてしまいそうなほどに、薄い、淡いことを意味する。あるいは、ほのかなようすを表す言葉だが、現代の会話に於いては普段使いされることはなく、和歌などに登場する "雅” な表現ということになる。

"サンカヨウ" は、ナンテンなどと同じメギ科の多年草で、本州の中部以北から北海道、サハリンにまで分布している。生息地は山深い場所になるため、普段、目にする植物ではない。漢字では "山荷葉" と書き、可憐な小さな白い花をつける。映画では、その花びらは雨に濡れると透明になるという説明がされる。花言葉は "親愛の情、幸せ、清楚な人" 。

原作は窪美澄の連作短編集「水やりはいつも深夜だけれど」の一編で、この小説集は題名からも連想できるように植物に関する話で構成されている。窪美澄は「思春期の女の子を書きたかった」と、雑誌のインタビューで答えている。

高校生の陽(志田彩良)は、父の直(井浦新)とふたり暮らし。放課後、友人たちとのひと時も、時間になると帰宅を急ぐ。陽には主婦業が待ち受けていて、周りもそれを承知し、そのことを気にかけてくれる。父娘の日常も陽と友人たちとの関係性も、親愛の情に溢れている。

ある日、父は娘に告げる。好きな人ができたこと、その人と再婚したいこと、その人には娘がいること。横並びの父娘。今泉作品によく登場する構図だが、ほぼ父親からの一方的な話を聞くという形が少し違う。優しい関係性が見えると同時に、陽の心に微妙な変化が生まれる瞬間。

父は再婚し陽には新しい家族ができる。家事の分担が軽くなった陽は、美術部の同級生・陸(鈴鹿央士)に想いを打ち明ける。

実母(石田ひかり)とのほろ苦い再会。悪魔のように奔放な新しい妹や、ぎこちなかった継母とも緩やかに打ち解けていく。そして、宙ぶらりんだった陸との関係にも幸せな進展が見える。

繊細なサンカヨウ=清楚な人・陽をぎこちなくとも優しく包み込む、今泉作品の新境地。

語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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