岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

Meet somewhere

ムーミンの作者トーベの翔んだ伝記映画

2021年11月01日

TOVE /トーベ

© 2020 Helsinki-filmi, all rights reserved

【出演】アルマ・ポウスティ、クリスタ・コソネン、シャンティ・ロニー
【監督】ザイダ・バリルート

厳格な父との軋轢や恋の行方は、どれも激しく眩しい

トーベ・ヤンソンは1914年、フィンランドの首都ヘルシンキに生まれた。母のシグネ=ハンマルステンはスウェーデン人の画家。父のヴィクトルはスウェーデン系のフィンランド人で彫刻家だった。フィンランドは1917年にロシアから独立宣言したが、翌年には内戦状態になったほど、一枚岩の国家ではなかった。公用語はスウェーデン語とフィンランド語に分かれており、ヤンソン家はスウェーデン語を使う少数派だった。

『TOVE トーベ』は、第二次世界大戦下のヘルシンキに始まる。トーベ・ヤンソンは当時、画家として活動を始めていた。しかし、厳格な父は彼女の作品を評価することはなく、親子には深い軋轢が存在していた。美術界にある保守的な厚い壁も、彼女が満たされないと感じる原因のひとつだった。

トーベ(アルマ・ポウスティ)は、絵画制作に打ち込むための拠点であるアトリエを借りる。そこは爆撃のため廃墟同然に壊れてかけていた。それでもトーベは若き芸術家たちとの交流を通じ、自らのキャリアにも新たな展開を模索するのだった。

そして、恋もする。

あるパーティーで出会うヴィルタネン(シャンティ・ルネイ)は、既婚者だった。逢瀬を繰り返すふたりのもとに、ヴィルタネンの妻から呼び出しの電話がかかってくる。不倫という障害を感じさせないふたりの関係。

そんな時、舞台演出家のヴィヴィカ・バンドラー(クリスタ・コソネン)と出会う。同性である彼女との激しい恋は、密かに育まれていたにすぎなかった "ムーミン" とそのキャラクターたちに新たな息吹をもたらすことになる。

"LGBTQ" という特別な枠など感じさせることのない、当時としては跳んだトーベの生き方は、吹っ切れた清々しさすら感じさせる。

今や世界中で愛されている "スナフキン=ムーミン" の物語誕生の秘話は、ダンシング・トーベの姿と見事にシンクロする。

語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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