岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

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過去から現代を見るエゴとプライドの決闘物語

2021年11月02日

最後の決闘裁判

© 2021 20th Century Studios. All Rights Reserved.

【出演】マット・デイモン、アダム・ドライバー、ジョディ・カマー、ベン・アフレック
【監督】リドリー・スコット

3つの真実とその曖昧な余韻が重い

1386年、14世紀後半のフランスが舞台。その頃、ちょうど、"100年戦争" の只中だった。

100年戦争の詳細は世界史の検索で明らかにしていただくとして、冒頭は闘いのシーンから始まる。川を挟み対峙する部隊。敵の挑発にのるかたちで、隊を率いる従騎士のカルージュ(マット・デイモン)は、盟友ル・グリ(アダム・ドライバー)の忠告を振り払うように突撃を開始してしまう。戦闘中、ル・グリの危機一髪を救うのはカルージュだったが…。主役となる2人の男の性格と置かれた状況を提示し、その後の運命を暗示する見事なオープニング。

その頃の日本は室町幕府の統治下で、朝廷が分裂していた南北朝の時代。フランスも国王の下、領地を守るのは貴族の配下であった騎士や従騎士たちで、その身分階層は似ていると言えなくもない。闘いは武士が刀なら騎士は剣であった。

『最後の決闘裁判』はカルージュ、ル・グリ、そしてカルージュの妻となるマルグリット(ジョディ・カマー)それぞれの視点が描かれる。闘いからの帰還後、領主である伯爵ピエール(ベン・アフレック)に謁見する。カルージュがピエールから不当な差別的な扱いを受けていることがわかり、その後、娶ったマルグリットの持参金がわりの領地を横取りされたことで大きなしこりが生まれる。

決闘裁判は、西暦500年代初頭に発生し、裁判における判決の不満を解消する最終的な手段として制度化された。背景にはキリスト教の信仰があり、中世ヨーロッパでは広く行われた。ただ、対象となったのは貴族や自由人に限られていた。12世紀に最盛期をむかえたが、1258年ルイ9世の勅令で禁止された。映画では、この特例を認められる公聴会の様子が描かれる。

マルグリットはカルージュの留守中、ル・グリに強姦されたことを告白する。それぞれの訴えは食い違い、決闘裁判に発展していく。 忖度、パワハラ、男と女、加害者と被害者、その構図は現代社会にそのまま存在し当て嵌まる。血生臭い決闘の後の曖昧さが怖い余韻となる。

語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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