岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

Meet somewhere

10億人に1人の天才少女をどう育てるか

2018年02月01日

gifted ギフテッド

©2017 Twentieth Century Fox Film Corporation

【出演】 クリス・エヴァンス、マッケナ・グレイス、リンゼイ・ダンカン、ジェニー・スレイト、オクタヴィア・スペンサー
【監督】マーク・ウェブ

 本作のテーマは天才少女の育て方。フロリダに住む主人公の6才の少女の数学レベルは大学院修士課程以上。普通の公立小学校に入学するも、あまりのレベルの違いに退屈してしまう。もう少し大人なら才能の隠し方も分かっていようが、そこは小学生、あからさまな態度で先生もすぐにこの少女の特異な才能に気付く。
 タイトルのギフテッドは「天からの授かりもの」というニュアンス。アメリカは天才教育を行う特殊な学校が各州にあるようで、担任の先生は奨学金と共に転校を勧める。ところが、育て親となっているこの少女の伯父にはある事情があった。その境遇を見過ごせないボストンのリッチな祖母は、親権を奪うべく裁判を起こす、というストーリー。
 10億人に1人というのは裁判中の祖母のセリフ。実は亡くなった少女の母親も、数学界の難問10を解くほどの大変な才能の持ち主だったことが分かる。少女を取り巻く大人たちの背景や過去が徐々に明らかになるにつれ、伯父の苦悩もより身近に感じられるストーリー展開が上手い。
 両親を亡くした不幸な少女と伯父の物語と思いきや、アメリカの抱える格差や人種の問題も浮き彫りにする。伯父と少女側の黒人の弁護士は判事について、争点が双方に曖昧なケースは金持ち側に有利な判決を下す、と漏らす。この天才少女は将来人類にとって計り知れない進歩をもたらす数学上の発見をする可能性が高く、国益や公益上の観点からも考えなければならない。主人公にしてみれば、放っておいてということなのだろうが、裁判になった以上、あらゆる側面が考慮される。個人の幸福と家族の愛情、貧乏な伯父と裕福な祖母の綱引き、黒人と白人の弁護士の対立、と色々な力関係が描かれている。
 少女を演じたマッケナ・グレイスが魅力的。子供らしさと数学の溢れる才能を持つ大人びた感覚の両方をうまく表現している。

『gifted ギフテッド』は関シネックスマーゴほか、全国で上映中。

語り手:シネマトグラフ

外資系資産運用会社に勤務。古今東西の新旧名画を追いかけている。トリュフォー、リヴェット、ロメールなどのフランス映画が好み。日本映画では溝口と成瀬。タイムスリップして彼らの消失したフィルムを全て見たい。

観てみたい

100%
  • 観たい! (5)
  • 検討する (0)

語り手:シネマトグラフ

外資系資産運用会社に勤務。古今東西の新旧名画を追いかけている。トリュフォー、リヴェット、ロメールなどのフランス映画が好み。日本映画では溝口と成瀬。タイムスリップして彼らの消失したフィルムを全て見たい。

ページトップへ戻る