岐阜新聞 映画部

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酒飲みに痛烈な一撃を食らわされる、アカデミー賞受賞作

2021年10月18日

アナザーラウンド

©2020 Zentropa Entertainments3 ApS, Zentropa Sweden AB, Topkapi Films B.V. & Zentropa Netherlands B.V.

【出演】マッツ・ミケルセン、トマス・ボー・ラーセン、マグナス・ミラン、ラース・ランゼ、マリア・ボネヴィー
【監督】トマス・ヴィンターベア

酒飲みでも希望はあるよ、生きてれば必ずいいことあるよ

「酒は百薬の長」

  酒飲みの私が頑なに信じている言葉である。ストレスの緩和や食欲の増進に効果を発揮し、健康にプラスするのだと自分に言い聞かせて毎日飲んでいる。いままで泥酔してでの失敗は数知れずだが、コロナ禍ではそれもままならず、家で寝落ちしてしまうくらいが関の山だ。

そんな酒飲みに痛烈な一撃を食らわされたのが『アナザーラウンド』である。

  デンマークでは、16歳未満はビールやワインを購入できないものの、未成年の飲酒を禁止する法律は無いらしく、高校生でも浴びるようにジャンジャン飲んでいる。

  そんなお国柄の、冴えない中年の高校教師4人組が本作の主人公だ。

  教える教科は歴史・体育・音楽・哲学。日本流に言えば主要科目でなく傍系。私の高校時代、変わった先生は受験科目以外に多く存在し、「ぼくの好きな先生、ぼくの好きなおじさん」の宝庫だった。

  そんな学校でも家庭でも居場所のない彼らが考え出したのが、「血中アルコール濃度を0.05%に保つとすべてうまくいく」という都合のいい理論だ。下戸の人には理解しがたいだろうが、私なぞ、この映画を見てから、どこかに裏付けはないものかとインターネットで調べまくった。出てくるのは「飲酒はやっぱり良くない」という記事ばかり。残念な結果である。

  彼らは、「ワインならグラス1~2杯」ということで、はじめはうまくいく。

  しかしここからが酒飲みの卑しいところ。「どこまでが許容範囲か調べる」という勝手な言い訳で、正体をなくすまで酒量を増やしていくのだ。

  私は映画を観ている間中、いままでの数々の醜態が蘇ってきて、恥ずかしさで一杯になってきた。もう二度と泥酔はしまいと固く誓いたいがチト自信はない。

  でもこの映画、そんなだらしない酒飲みでも希望はあるよ、生きてれば必ずいいことあるよ、と励ましてくれる。

  アカデミー賞国際長編映画賞を受賞したのは伊達ではない。

語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白さから映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白から映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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