岐阜新聞映画部映画館で見つけた作品テーラー 人生の仕立て屋 B! 不器用な仕立て屋が踏み出した新たな道 2021年10月05日 テーラー 人生の仕立て屋 © 2020 Argonauts S.A. Elemag Pictures Made in Germany Iota Production ERT S.A. 【出演】ディミトリス・イメロス、タミラ・クリエヴァ 【監督・脚本】ソニア・リザ・ケンターマン ウェディングドレスの仕立てはこなせても女心はわからない ギリシャ・アテネ、繁華街の通りに面した荘厳な店構えの仕立て屋。ニコス(ディミトリス・イメロス)の朝のルーティーンが終わり、客を迎える態勢となるが、店の入口を開く人はいない。高級スーツの仕立て屋は父がはじめ、ニコスが跡を継ぐ体制で維持されてはいたが、いかんせん、このご時世。かつての常連客は次々と天国に旅立ち、店に保管された型紙はモクズと化してしまった。父とともに出向いた銀行では、借金返済不納で差押えの通告を受ける。 ニコスは商売人にはほど遠い、職人気質の無愛想な男で、近所付き合いも隣に住む、オルガと幼い娘の母娘に限定されていた。 不運は重なるもので、父が病に倒れる。そんな時、店の前を毎朝通る屋台の商売人にヒントを得て、移動式の仕立て屋もありかと、型紙ならぬ設計図を引いて、手作りの屋台を完成させる。 ニコスを演じるディミトリス・イメロスは初見の役者だが、ギリシャではベテランの俳優だという。淡々とした無表情な面構えや、計算された神経質な身のこなしで、不器用なニコス像を浮かび上がらせ、隣りの少女との光による秘密の交信で見せる子どもっぽい可愛らしさを巧みに演じ分けている。 ニコスのアイデアは、紳士服の仕立てでは空振りに終わるが、「ウェディングドレスは作れないの?」という突然のオファーに一度は戸惑うものの、その注文を受けることを決断する。 そんな時、少々、手をこまねくニコスに助け舟を出すのは隣人のオルガだった。 監督は本作が初長編となるソニア・リザ・ケンターマンで、新鋭の女性監督と期待されている。 ウェディングドレスとレディース服の商売が軌道に乗り始めると、オルガとの密かな恋にも火がつく。人妻であり母であるオルガがニコスに寄せる思いと、引き潮ののような感情の推移が、女流ならではの細やかさで描かれている。 オルガの亭主を交えた会食の場の腹の探り合いのような会話や、オルガの取った行動には、不可解で消化不良な面があって、これはギリシャの国民性なのかと割切ることもできず、良質な物語に澱が残るのはちょっと残念でならない。 語り手:覗き見猫映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。 100% 観たい! (7)検討する (0) 語り手:覗き見猫映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。 2024年09月20日 / クレオの夏休み 6歳の少女のひと夏の冒険成長譚 2024年09月20日 / ボレロ 永遠の旋律 名曲 "ボレロ" の誕生を目と耳で体感する 2024年09月20日 / ボレロ 永遠の旋律 この名曲が作られた経緯を紐解く、愛と哀しみと苦しみのボレロ more 2021年10月13日 / 【思い出の映画館】千日前セントラル(大阪府) 戦後の活気ある商店街でアメリカ映画を送り続けた。 2022年02月09日 / 岩波ホール(東京都) エキプ・ド・シネマの想い出に感謝を込めて。 2021年11月24日 / 【思い出の映画館】テアトル石和(山梨県) ぶどう園の真ん中にポツンと佇む映画館。 more
ウェディングドレスの仕立てはこなせても女心はわからない
ギリシャ・アテネ、繁華街の通りに面した荘厳な店構えの仕立て屋。ニコス(ディミトリス・イメロス)の朝のルーティーンが終わり、客を迎える態勢となるが、店の入口を開く人はいない。高級スーツの仕立て屋は父がはじめ、ニコスが跡を継ぐ体制で維持されてはいたが、いかんせん、このご時世。かつての常連客は次々と天国に旅立ち、店に保管された型紙はモクズと化してしまった。父とともに出向いた銀行では、借金返済不納で差押えの通告を受ける。
ニコスは商売人にはほど遠い、職人気質の無愛想な男で、近所付き合いも隣に住む、オルガと幼い娘の母娘に限定されていた。
不運は重なるもので、父が病に倒れる。そんな時、店の前を毎朝通る屋台の商売人にヒントを得て、移動式の仕立て屋もありかと、型紙ならぬ設計図を引いて、手作りの屋台を完成させる。
ニコスを演じるディミトリス・イメロスは初見の役者だが、ギリシャではベテランの俳優だという。淡々とした無表情な面構えや、計算された神経質な身のこなしで、不器用なニコス像を浮かび上がらせ、隣りの少女との光による秘密の交信で見せる子どもっぽい可愛らしさを巧みに演じ分けている。
ニコスのアイデアは、紳士服の仕立てでは空振りに終わるが、「ウェディングドレスは作れないの?」という突然のオファーに一度は戸惑うものの、その注文を受けることを決断する。
そんな時、少々、手をこまねくニコスに助け舟を出すのは隣人のオルガだった。
監督は本作が初長編となるソニア・リザ・ケンターマンで、新鋭の女性監督と期待されている。
ウェディングドレスとレディース服の商売が軌道に乗り始めると、オルガとの密かな恋にも火がつく。人妻であり母であるオルガがニコスに寄せる思いと、引き潮ののような感情の推移が、女流ならではの細やかさで描かれている。
オルガの亭主を交えた会食の場の腹の探り合いのような会話や、オルガの取った行動には、不可解で消化不良な面があって、これはギリシャの国民性なのかと割切ることもできず、良質な物語に澱が残るのはちょっと残念でならない。
語り手:覗き見猫
映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。
語り手:覗き見猫
映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。