岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

Meet somewhere

苦難を乗り越え、新しい一歩を踏み出すための人生応援ムービー

2021年10月05日

テーラー 人生の仕立て屋

© 2020 Argonauts S.A. Elemag Pictures Made in Germany Iota Production ERT S.A.

【出演】ディミトリス・イメロス、タミラ・クリエヴァ
【監督・脚本】ソニア・リザ・ケンターマン

「待ち」の商売から「取りに行く」商売へ、ニコスは動き出す

日本では、働き方の多様化やクールビズの浸透などで元々スーツ離れが進んでいたが、コロナ禍での在宅勤務増により加速度的にスーツ市場が縮小している。

ギリシャでも事情は同じようで、ソニア・リザ・ケンターマン監督によると、中でもオーダーメイドのテーラーは、現在アテネに残っているのは5~7軒くらいということだ。

本作は、36年間高級スーツ一筋に、確かな技術力と高いプライドで生計を立ててきた50歳の独身ニコス(ディミトリス・イメロス)が主人公。彼が、廃れいく商売として自分の持っていたものをすべて奪われそうになった時、如何にして苦難を乗り越え、新しい一歩を踏み出したのかを淡々と描いた人生応援ムービーだ。

先の読めない世の中、現代では高い専門性を持ったモノ作りより、口八丁のプレゼン能力や、投資とか株などの金融知識の方がもてはやされている。

ニコスも当初は手をこまねいて見ているほかなかった。しかし彼が凄いのは、「待ち」の商売から、移動式カートを引いてでも「取りに行く」方式に変えたことだ。最初はうまくいかなかったが、動き出したことで転機が訪れる。

今まで彼が考えもしなかったウエディングドレスの仕立て、それに引き続く婦人服の製造、それも庶民がギリギリ手の届く価格での提供に踏み切ったことだ。そこで得たものは、儲けの額ではなく、お客さんが新しい服に袖を通した時の笑顔に尽きる。まさに顧客第一なのだ。ポーカーフェースだったニコスの一瞬の笑顔は、この映画の最高に幸せな瞬間だ。

デザインや生地選びに始まり、採寸してからの型紙作り、そして仮縫いから本縫い。スーツ作りのリアルな工程も興味津々だが、一番は価格である。セリフの中で「イタリア製のスーツは普通3,000~4,000ユーロ、私の店で仕立てればナポリの生地で1,200ユーロ」。破格の値段のニコスの店でも、15万6千円!。私には一生縁がない。

語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白さから映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白から映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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