岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

Meet somewhere

ノルウェーはホロコーストに加担した。自戒を込めた映画

2021年09月22日

ホロコーストの罪人

©2020 FANTEFILM FIKSJON AS. ALL RIGHTS RESERVED.

【出演】ヤーコブ・オフテブロ、クリスティン・クヤトゥ・ソープ、シルエ・ストルスティン、ピーヤ・ハルヴォルセン、ミカリス・コウトソグイアナキス、カール・マルティン・エッゲスボ
【監督】エイリーク・スヴェンソン

心の奥底にある差別意識が、いつしか加害者になるやもしれぬ

ヨーロッパにおけるユダヤ人への偏見や迫害は2000年に及ぶ歴史がある。エルサレム滅亡と共に各地に移り住んだユダヤ人に対し、時の為政者たちは民衆の不満のはけ口として反ユダヤ人感情を利用してきた。

それが最も恐ろしい形となって現れたのがナチスドイツによるホローコーストだ。そしてドイツの枢軸協力国や占領地域の傀儡政権によるユダヤ人狩りへの加担は、絶対に忘れてはならぬ人類の負の遺産である。

本作は、ノルウェー政府や国民がどんなに言い訳をしようが取り繕うが、ホロコーストに加担したという事実を認めなければならず、その上で二度と同じ過ちを繰り返してはならぬという自戒を込めた映画となっている。

1940年4月ナチスドイツによるノルウェー侵攻には若干の抵抗を見せたものの、親独でファシストの軍人クヴィスリングが政権を握り、ナチスドイツの手先となってしまった。

映画は、1942年11月16日、ノルウェーの秘密国家警察によるユダヤ人女性の一斉捕獲からスタートする。

主役となるブラウデ一家は、迫害が激しくなってきたリトアニアから亡命してきたユダヤ人だ。

悲劇が始まる3年前、二男のチャールズ(ヤーコブ・オフテブロ)がボクシングのノルウェー代表となり、隣国スウェーデンの選手に勝利して、慎ましやかながら幸せな日々を送っていた。

しかしユダヤ人を取り巻く環境は、刻一刻と悪化の一途をたどっていく。

映画は、この一家の悲劇を劇的にたどっていく。ノルウェー国内でユダヤ人殺害はなくとも、アウシュヴィッツ行きの船には強制連行して乗せていく。これはすべてノルウェー人の手によるものだ。

移民排斥やヘイトが平然と行われている現代。「〇〇人は出ていけ」という極端な人々だけでなく、心の奥底にある差別意識が、いつしか加害者になるやもしれぬ。歴史を繰り返さないためにも、いま作られなければならなかった映画だ。

語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白さから映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

観てみたい

100%
  • 観たい! (9)
  • 検討する (0)

語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白から映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

ページトップへ戻る