岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

Meet somewhere

ふたりの少年の美しくも切ない一瞬の恋

2021年09月21日

Summer of 85

© 2020-MANDARIN PRODUCTION-FOZ-France 2 CINÉMA–PLAYTIME PRODUCTION-SCOPE PICTURES

【出演】フェリックス・ルフェーヴル、バンジャマン・ヴォワザン、ヴァレリア・ブルーニ・テデスキ、メルヴィル・プポー
【監督・脚本】フランソワ・オゾン

未練の後始末にオゾン監督の本音が見える

1985年夏、フランス・ノルマンディーの港町が舞台。
16歳の少年アレックス(フェリックス・ルフェーヴル)の独白は、ひとつの出来事が終わってしまったことを語り、何らかの罪に問われていることを明示する。

友人のヨットを借り、ひとり海に出たアレックス。帰港の途中、稲光りとともに天候が悪化、ヨットが転覆し、海に投げ出されるが、偶然近くにいた2つ年上のダヴィド(バンジャマン・ヴォワザン)に救出される。

この劇的な出会いの後、2人は次第に惹かれ合い、友情という一線を超え恋愛感情で結ばれていく。

監督は今や、フランス映画を代表する監督のひとりフランソワ・オゾン。1980年代後半から短編映画を撮り始め、そのキャリアをスタートさせている。日本では1999年に紹介が始まっている。その時公開された短編『サマードレス』(1996年)は、『Summer of 85』と同様、夏の海辺を舞台にした、恋人関係にある少年2人の物語で、その時の記憶が甦える。

昨年、CINEXでも上映された、前作『グレース・オブ・ゴッド 告発の時』は、神父による少年への性的虐待を扱った実話の映画化だったが、若き日のオゾンのイメージだったスキャンダラスでエロチックなイメージはもはやなく、成熟した大人の映画作家としての風格すら感じる社会派映画だった。

原作はイギリスの作家ダイアン・チェンバーズの小説「おれの墓で踊れ」(1982年)で、オゾン自身が17歳の時に出会い、強い影響を受けたという。ゲイである事を公表していることもあり、映画化は自然のことに思えると同時に、そこには念願という強い意志もうかがえる。

初め、どちらかと言えばぎこちなかったアレックスの感情は、積極的なダヴィドによってとき解され、溺れていく。この美しい2人少年の恋の行方は、瑞々しく眩しいほどだが、結末を知らされている刹那的な恋であることが、やるせない切なさを醸し出す。

熱く結ばれたふたりの、呆気なさすら感じる別れの後に焦点が当たるのは、オゾンなりの始末のつけ方なのかも知れない。

語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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