岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

Meet somewhere

イスラーム社会発 女性映画の秀作

2021年09月09日

モロッコ、彼女たちの朝

©︎ Ali n' Productions – Les Films du Nouveau Monde – Artémis Productions

【出演】ルブナ・アザバル、ニスリン・エラディ
【監督・脚本】マリヤム・トゥザニ

絶対食べたくなる!パンや焼き菓子

モロッコ王国はアフリカ大陸の北西にあり、北東部の一部は地中海に、他は大西洋に面している。地中海のヨーロッパ風土とアラブの風土が混在し、不思議な化学反応のもとに魅惑的な国というイメージが定着している。

映画ではそのものズバリの、『モロッコ』(ジョセフ・フォン・スタンバーグ監督/1930年=日本公開31年)があり、『カサブランカ』(マイケル・カーティス監督/1941年=日本公開46年)は、モロッコ王国最大の都市カサブランカを舞台にしている。いずも、ラブストーリーだが、舞台となる魅惑的な街の雰囲気が、映画空間の創造に貢献していた。

『モロッコ、彼女たちの朝』の舞台となるのはカサブランカのメディナ(=旧市街)である。

臨月に膨らんだお腹を抱えたサミア(ニスリン・エラディ)は、路地を彷徨い、家々の扉をノックしては職に就こうとするが、反応は門前払いに近い。イスラームの社会では未婚の母はタブーとされる。身重の職探しは容易ではない。

小さなパン屋を営むアブラ(ルブナ・アザバル)は、夫の死後、幼い娘ワルダと慎ましく暮らしていた。厳格な娘への躾が、母子家庭の緊張感を窺わせる。

サミアはアブラのパン屋に職を求めるが、アブラは冷たく拒絶する。それでも店の近くの路上に夜になっても座り込んでいるサミアを、一晩だけと限定しながらも泊めることにする。

乾いた北アフリカの街の雰囲気と、自然光に照らされた室内が、アラビアの民族音楽のもとに浮かび上がるビジュアルが秀抜。民族衣装に身を包みパン生地をこねる女性の姿を捉えたショットは、美しい絵画のように見える。

拒絶と諦念の関係でしかなかった、頑な2人の女性が、次第に心を解き解し和んで行く過程が、細やかに描かれる。孤独を共有することで、互いの立場を尊重しながら、新たな一歩へと導き誘う女性の友情物語は、静かに、しかし、力強く心を揺さぶる。

監督のマリヤム・トゥザニは、本作が長編デビュー作。女性監督として初めてアカデミー賞のモロッコ代表に選出された。1980年生まれの期待の新星である。

語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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