岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

Meet somewhere

創造のための苦悩…そして生まれる圧倒的な美

2018年01月25日

ダンシング・ベートーヴェン

©Fondation Maurice Bejart, 2015 ©Fondation Bejart Ballet Lausanne, 2015

【出演】 ジル・ロマン、エリザベット・ロス、ジュリアン・ファヴロー、カテリーナ・シャルキナ、那須野圭右、オスカー・シャコン、大貫真幹
【監督】アランチャ・アギーレ

バレエ熱をたきつける罪なドキュメンタリー

 “20世紀最高の振付家”とも称されるモーリス・ベジャールは1927年、フランス・マルセイユに生まれました。41年、14歳でバレエのレッスンを始め、45年にはマルセイユのバレエ団に入団しています。翌年には、振付家としての最初の作品『小姓』を発表していますから、そのキャリアはダンサーというよりも早くに振付家だったわけです。映画との関わりは、50年にスウェーデン映画『火の鳥』の振り付けをしたことが始まりですが、ベジャールの名を世界に広めたのは、81年に公開された、クルード・ルルーシュ監督の『愛と哀しみのボレロ』でしょう。
 『愛と哀しみのボレロ』は、フランス、アメリカ、ソビエト(ロシア)、ドイツを舞台に、4つの家族が2世代に渡って微妙な接点を持ちつつ、第二次世界大戦をはさんだ時の流れのなかで、生きる様を描いた人間ドラマです。それに加えて、重要な登場人物は、カラヤン(指揮者)、ピアフ(シャンソン歌手)、ヌレエフ(バレーダンサー)、グレン・ミラー(音楽家)といった実在の人物をモデルにしています。そして、映画の終盤、パリで開催されるチャリティー公演の中心が、ベジャールの振り付けによるバレエ=ボレロで、複雑な構成の物語を集結させるとともに、見事に締めくくる役割を果たします。
 このベジャール振り付けによるボレロが与えた影響はさまざまで、それまで高かったバレエ鑑賞の敷居を低くしたことにとどまらず、バレエ以外の舞踏=振り付けに、大きな変革をもたらしたと言っても過言ではないでしょう。
 『ダンシング・ベートーヴェン』は、ベジャールが64年に発表したベートーヴェンの第九交響曲=バレエを再演するために、奔走する人たちを描いたバックステージものです。ベジャールが率いたバレエ団を、いま支えるジル・ロマンの凛とした美しさ。性別、人種を超越する格闘と、創造のための葛藤。アランチャ・アギーレ監督は、女性ならではの繊細さと冷静な視点を保つ。圧倒的な公演がたまらなく見たくなる、罪なドキュメンタリーです。

『ダンシング・ベートーヴェン』は岐阜CINEXで1/27(土)より公開予定。

語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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