岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

Meet somewhere

記憶や言葉が違って見える"僕"に寄り添うドキュメンタリー

2021年09月01日

僕が跳びはねる理由

©2020 The Reason I Jump Limited, Vulcan Productions, Inc., The British Film Institute

【監督】ジェリー・ロスウェル

別だと思っていた自閉症という世界が見える

『僕が跳びはねる理由』は、世界各地の5人の自閉症の少年少女たちの姿と、その家族たちの証言をもとに、自閉症の真の姿を見つめ理解するという意図でつくられたドキュメンタリーだが、そこにはきっかけとなった1冊の本が存在する。

それは会話が難しい自閉症という障害を抱えた東田直樹が、13歳の時に執筆したエッセイ「自閉症の僕が跳びはねる理由」である。

この本を英訳したのが、イギリス人のベストセラー作家デイヴィッド・ミッチェルとその妻ケイコ・ヨシダである。日本での滞在経験もある夫婦が、この原作に触れるきっかけを得たのには、自らも自閉症の息子を育てているという現実が影響していた。

自閉症という言葉は今はよく耳にするようになったが、その内実は理解されているとは言い難い。

自閉症は発達障害のひとつとされているが、その原因は特定されてはいない。生まれつきの神経機能の障害という考えが一般的で、「対人関係の構築が難しく集団生活に馴染めない」「強いこだわりがあり変化を好まない」という特徴が知られている。

この特徴が本人の生活に支障をきたしていなければ、障害とは呼ばない。本人が苦しみ生活に不自由がある場合には、医療や福祉のサポートが必要となるのだが、そんな定義とは関係なく、身近な家族にとっては、時に切実な負担となることがある。普通とは違う、突発的な規格外の行動に、驚き戸惑い悩むという証言は、この映画が追った5人の家族たちが口にする。

現在、自閉症はその症状を意味する"スペクトラム"をつけて、自閉症スペクトラムという名称を使うようになっている。障害とは見なさない人を含めれば、その総数は全人口の10%に及ぶという説もある。それはもはや障害と考えるには無理がある。スペクトラム=症状は"個性" と受けとめる。この流れは自然に思えるが、同時に問題も山積されている。

今回、CINEXでは、東田直樹氏へのインタビュー映像が併映されている。キーボードで文字を繋ぐように、文字盤のボードに触れて言葉を紡ぐ姿。このコミニュケーションの方法が、いまひとつ明確にならなかった、自閉症という世界を実感させてくれるヒントになる。

語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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