岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

Meet somewhere

恒星の進化の最終段階で光り輝くスーパーノヴァに人生を重ねる

2021年08月26日

スーパーノヴァ

©2020 British Broadcasting Corporation, The British Film Institute, Supernova Film Ltd.

【出演】コリン・ファース、スタンリー・トゥッチ
【監督・脚本】ハリー・マックイーン

ごく親しいからこそ、本当のことが言えない

互いに信頼し合い愛し合うパートナーを分かつのは、死だけではない。

20年来の同性パートナーであるピアニストのサム(コリン・ファース)と作家のタスカー(スタンリー・トゥッチ)は、互いの才能を認めあい尊重してきた間柄だ。芸術家として積極的に自分の考えを表現し観客の心を揺さぶってきた。

しかし永遠に続くと思っていた素敵な関係性が、タスカーの若年性認知症により、いままさに崩れ去ろうとしている。

本作は、お互いに認め合って人生を一緒に歩んできた者同士だからこそおこる、相手を慮っての嘘や秘密、見て見ぬふりをする関係性をまずは描いていく。

ハリー・マックイーン監督がいう英語の慣用句”Elephant in the room”(部屋の中の象=誰もが認識しているのに誰も象のことに触れない、という意味)が、一番言い得て妙な表現だ。ごく親しいからこそ、本当のことが言えないのはよくわかる。

2人はサムの運転で、イングランド北部の風光明媚な観光名所・湖水地方にキャンピングカーで向かう。水と緑が織りなす息をのむように美しい景観は、2人の絆を確かめるのに絶好のロケーションだ。望遠鏡で星を眺めながら、恒星の進化の最終段階で大爆発して光り輝く超新星(スーパーノヴァ)に人生を重ねる。

サムの実家を訪れる2人。ここでこの映画の素晴らしさが爆発する。

突然のサプライズパーティーに驚き喜ぶ2人。認知症の影響でろれつが回らないタスカーに代わってサムがスピーチを代読する。そこには自らの認知症を認めてこれからも頑張る事、そしてサムへの深い感謝が書かれていたのだ。感動の場面である。

さらに映画全体に流れているゲイに対する偏見の無さだ。サムの実家の面々は、2人をごく普通のカップルとして接している。映画は認知症による”別れ”の問題を扱っているが、たまたま同性だったとのストーリーなのだ。

愛に性別は関係ない。

語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白さから映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

観てみたい

100%
  • 観たい! (8)
  • 検討する (0)

語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白から映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

ページトップへ戻る