岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

Meet somewhere

「アレ・ブレ・ボケ」の天才写真家・森山大道のいまを捉えた映画

2021年08月24日

過去はいつも新しく、未来はつねに懐かしい 写真家 森山大道

©︎『過去はいつも新しく、未来はつねに懐かしい』フィルムパートナーズ

【出演】森山大道、神林豊、町口覚 ほか
【監督・撮影・編集】岩間玄

カメラをパッと構えてサッと撮ってスッと離れる。凄い早業だ

NIKONのCOOLPIX S7000を首からぶら下げた男が、キョロキョロしながら街を歩いている。と目にした被写体に、カメラをパッと構えてサッと撮ってスッと離れる。撮られたことさえ気が付かない早業だ。

この年齢不詳の男こそ、写真の粒子が荒れ、激しくブレ、画像がボケた「アレ・ブレ・ボケ」が特徴で、自称「街頭スナップ写真家」森山大道さんだ。

本作は、1996年に彼のテレビドキュメンタリーを制作した日本テレビの岩間玄さんが、2018年の森山大道のありのままの姿を捉えた、画面の外まで想像できる画期的な劇場用ドキュメンタリーである。

映画は、森山の今を徹底的に追いかける。撮影クルーは組まず岩間1人でムービーカメラを回す。

森山は、素人が持つようなコンパクトカメラで、どんどんどんどん撮っていく。見ていても特にこれといったプロっぽさは見当たらない。彼によれば「カメラなんて写ればなんでもいい。コピー機だ」。しかし、そこから見る人の魂を揺さぶるような名作・傑作が生まれるなんて、センスと根気?いやいや魔法使いだ。

映画は、森山のデビュー作「にっぽん劇場写真帖」の復刊プロジェクトに迫っていく。編集者の神林と造本家の町口にも焦点があたる。

私がこの映画の特に好きなところは、森山が撮った写真を、広く一般に届けるためのプロセスについて丹念に見せてくれるシーンだ。写真集になっていく過程を、なんと木材の伐採からスタートする。もちろん企画・編集・紙の選定・印刷・製本、どれをとってもプロ中のプロの仕事である。

さらに特徴的なのは、森山のプロフィール説明はほとんど省かれていて、彼のプライベートにはほぼ触れられないし、何度も口に出てくる盟友・中平卓馬が何者かは、一切わからない。説明的な部分を排したおかげで、いまの森山大道が浮き立ってくる。潔い編集だ。

町へ出て写真を撮りたくなってくる映画だ。

語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白さから映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白から映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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