岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

Meet somewhere

ホロコーストの真実を最初に伝えた脱走囚人の記録

2021年08月19日

アウシュヴィッツ・レポート

©D.N.A., s.r.o., Evolution Films, s.r.o., Ostlicht Filmproduktion GmbH, Rozhlas a televizia Slovenska, Ceska televise 2021

【出演】ノエル・ツツォル、ペテル・オンドレイチカ、ジョン・ハナー、ボイチェフ・メツファルドフスキ、ヤツェク・ベレル、ヤン・ネドバル、フロリアン・パンツナー、ラース・ルドルフ
【監督・脚本】ペテル・べブヤク

知ることに終わりがないことを痛感する再びのアウシュヴィッツ

アウシュヴィッツ=ビルケナウ強制収容所は、ポーランド南部・ブジェジンカ村にあった。最初、隣接するオシフェンチム市にあったのが第一強制収容所で、ブジェジンカはのちに作られた。ブジェジンカのドイツ語読みがビルケナウで、当時のポーランドはドイツ占領下にあった。

1979年、ユネスコはアウシュヴィッツ=ビルケナウ強制収容所を世界遺産に登録したが、これは"負の文化遺産"としてであり、「二度と同じ過ちが起こらないように」という願いが込められている。映画のコピーでも「過去を忘れる者は必ず同じ過ちを繰り返す」という、アメリカの哲学者で詩人のジョージ・サンタナヤナの名言を添えている。

ドイツの占領後、この地では石炭などの鉱物資源の産地に隣接していたことと、鉄道網の利便性が高いこともあって、物資生産の拠点として整備され、各地から集められた(強制的に)労働力が投入された。

労働力の確保という名目は、次第にアーリア人至上主義に基く閉鎖政策によって、孤立した地域性を利用した大規模な収容所として肥大していった。

収容されたのは、ユダヤ人、政治犯、ロマ・シンティ(ジプシー)、精神障害者、身体障害者、同性愛者、捕虜、聖職者、さらにこれらの人を匿った者などで、出身国は28に及び、ピーク時(1943年)には、アウシュヴィッツ全体で収容者は14万人達した。

『アウシュヴィッツ・レポート』は、この収容所を舞台にしている。時は1944年4月。いつもと変わらぬ朝、収容所が突然の緊張感に包まれ騒めき立つ。

遺体の記録係をしているスロバキア人のアルフレート(ノエル・ツツォル)とヴァルター(ペテル・オンドレイチカ)の2人が脱走を決行した。発覚後、同棟の囚人は戸外に整列を命じられ、執拗な尋問を受ける。4月といえ、厳しい寒さの下、立たされ続ける囚人たちとドイツ軍人たちの睨み合い。拷問で倒れる者、気力も体力も尽き崩れ落ちるように倒れる者。

僅かな隙をつき脱出に成功した2人は、奇跡的に国境を越え赤十字に保護され、アウシュヴィッツの実態を訴える。

観て知る事の繰り返しの意義を、また痛感する秀作である。

語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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