過去を忘れる者は必ず同じ過ちを繰り返す。現代へ警鐘を鳴らす映画
2021年08月19日
アウシュヴィッツ・レポート
©D.N.A., s.r.o., Evolution Films, s.r.o., Ostlicht Filmproduktion GmbH, Rozhlas a televizia Slovenska, Ceska televise 2021
【出演】ノエル・ツツォル、ペテル・オンドレイチカ、ジョン・ハナー、ボイチェフ・メツファルドフスキ、ヤツェク・ベレル、ヤン・ネドバル、フロリアン・パンツナー、ラース・ルドルフ
【監督・脚本】ペテル・べブヤク
目をそむけたくなるが、決して目をそらしてはならない
ナチスドイツは国内外に約2万か所の収容所を設置、国家の敵としてユダヤ人など数百万人を投獄した。中でも最大のアウシュヴィッツ収容所では、100万人以上が殺害された。
本作は、ユダヤ人が大量に行方不明になっている事が徐々に知られるようになった1944年4月、その地獄の様な実態を世界に知ってもらおうと決死の覚悟で脱出した2人の若きスロバキア系ユダヤ人と、決して口を割らなかった収容所の人々の過酷な運命を描いたホロコースト映画である。
前半では、アウシュヴィッツでの残虐な実態が、これでもかと描写される。毎日のように集められたユダヤ人はボロくずのように扱われ、いとも簡単に殺されていく。生きている人たちも、ろくな食事も与えられないで、過酷な労働に従事させられる。
首だけ地面から出して埋められた10人ほどの男の1人は、息子が戦死したドイツ軍伍長から何度も何度も頭を木の棒で打ち付けられる。脱走を手助けしたとして、同じ宿舎の人々は極寒の屋外で何日も直立不動を命じられる。見ている私たちは目をそむけたくなるが、決して目をそらしてはならないのだ。
後半は、怪我をしてもくじけそうになっても、決して諦めなかった2人に焦点が移っていく。
協力者もありかろうじて国境を突破した2人は、赤十字職員に告白するのだが、私たちには何もできないと言われてしまう。代わりにタイプライターを渡された2人は、32ページの報告書を書いて連合軍に渡すのだ。
現代では、ファシズムを信奉する極右政党やホロコーストはなかったとする一団が出てきたり、移民や異なる文化圏の人々を排斥する論調が幅を利かせている。
過激な言動の集団が、突然ポピュリズム的に支持され、権力を握るかもしれない。いや、すでにその第一段階に入っているかもしれない、と警鐘を鳴らす映画でもある。
「過去を忘れる者は必ず同じ過ちを繰り返す」。ずしりと重い言葉だ。
語り手:ドラゴン美多
中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白さから映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。
語り手:ドラゴン美多
中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白から映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。