岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

Meet somewhere

ホラーとコメディが融合した社会派スリラー

2018年01月23日

ゲット・アウト

©2017 UNIVERSAL STUDIOS All Rights Reserved

【出演】 ダニエル・カルーヤ、アリソン・ウィリアムズ、ブラッドリー・ウィットフォード、ケイレブ・ランドリー・ジョーンズ、キャサリン・キーナー
【監督・脚本・製作】ジョーダン・ピール

社会に巣食う差別意識を痛烈に風刺した快作

 黒人差別というシリアスなテーマを、先の読めないオリジナリティあふれる展開で描いた、ホラーとコメディが融合した社会派スリラーの快作。アメリカの黒人コメディアン、ジョーダン・ピールの初監督作品の本作は、そこかしこに張り巡らされた伏線と、意味ありげなシーンの連続でひと時も気を緩ませてくれない。「何故黒人の使用人がいるの?」「何故、夜全速力で走っているの?」「何故、突然鼻血が出るの?」頭の中は「何故?」「何故?」「何故?」と忙しく駆け巡る。あれやこれや考えていると、後半戦、一挙にどどーんと答えがやってくる。予想をはるかに上回る衝撃的な答えに、驚かされること間違いなしだ。
 黒人青年でカメラマンのクリスが、白人の彼女ローズの実家へ初めて行く。クリスの心配をよそにローズの両親は大歓迎。「黒人差別はしてません。3期目があったらオバマに入れます」。しかし、使用人は黒人で、亡き祖父を偲ぶパーティに招かれたのは白人ばかり。歓待してくれてはいるが、居心地は悪い。リベラルな白人の心の奥底に持つ差別意識が垣間見られ、その無知と傲慢さをあぶり出した社会風刺は痛烈だ。と同時に、観ている観客さえも、自らの差別意識に気付かされる秀逸なシナリオである。
 映画はなんとも言えない気持ちの悪い展開で、クリスも観客も不安にさせられる。まるで、ヒッチコックの傑作スリラーを見ているようだ。使用人の黒人メイドは完全にココロを殺していて怪しげだし、招待客の中の唯一の黒人青年は、クリスがカメラでシャッターをきった瞬間に鼻血を出した上「GET OUT」と叫ぶ。ますます不安は増幅し、一瞬たりとて目の離せないシーンがラストまで連続していく。
 すぐれたホラーやスリラー映画は、現代社会の裏にある潜在的意識を恐怖で表現した批評性や社会風刺が込められている。この映画も社会に巣食う差別意識を痛烈に風刺し批判した見事な仕上がりだ。

『ゲット・アウト』は大垣コロナシネマワールドほか、全国で公開中。

語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白さから映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白から映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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