岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

Meet somewhere

漂っている空気感はまさに昭和、美しい写真の様な映画である

2021年07月21日

椿の庭

©2020 “A Garden of Camellias” Film Partners

【出演】富司純子、シム・ウンギョン、田辺誠一、清水綋治、チャン・チェン、鈴木京香
【監督・脚本・撮影】上田義彦

富司さんの凛とした佇まいは、ノスタルジーでありリスペクトだ

映画『椿の庭』に流れている柔らかな陽光と穏やかな自然音に、私は強烈な郷愁を覚え懐かしさで胸が一杯になってしまった。

日本が様々な問題は抱えつつも未来に希望を見ることができた1960年代、ノスタルジー的に言えば昭和30年代後半から40年代前半、私が幼児から小学生だった時代だ。

相模湾に面した葉山の高台にある和風建築の家、手入れの行き届いた花きや樹木が目に優しい庭、着物を手際よく着こなし家事全般を当たり前のように難なくこなす女主人。

私の様な田舎者には眩しいばかりの生活だが、映画に漂っている空気感はまさに昭和であり、ゆったりした時間の流れの再現は、映画の最後まで貫かれている。

本作で脚本・監督・撮影というマルチタスクをやってのけた写真家の上田義彦さんは私より1個上。ほぼ同世代であり、映画に出てくる家屋の玄関、居間、外廊下、畳、障子、照明器具など幼き頃の思い出と同じだ。

さらに富司純子さん演ずる絹子の凛とした佇まい、特に着物を一人でスルスルと帯まで締めていくシーンをノーカットで見せてくれるのは、緋牡丹博徒で一世を風靡した富司さんに対するリスペクトでもあり、あの時代を生きた女性へのノスタルジーなのだ。

絹子の下の娘である陶子(鈴木京香)、韓国人と駆け落ちの末、交通事故で亡くなった上の娘の子ども・渚(シム・ウンギョン)。お話はこの3人を中心にゆったりと進んでいく。

住み慣れた家を相続税の関係で手放さざるを得なくなった絹子。結末は予想通りというか予定通りであるが、ストーリーはさして重要ではない。

一流の写真家の上田さんが撮影した映像は、金魚鉢の中の金魚ひとつとっても美しく優雅であり、椿の花・藤棚の藤・葉に止まる虫、庭の向こうに見える相模湾の青い海・白いヨットなど、最も美しく見える構図と光量で、見ている観客に落ち着きをもたらしてくれる。

美しい写真のような映画である。

語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白さから映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白から映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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