岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

Meet somewhere

双生児の姉弟の美しい過去に隠された真実

2021年07月07日

湖底の空

©2019MAREHITO PRODUCTION

【出演】イ・テギョン、阿部カ、みょんふぁ、武田裕光、アグネス・チャン
【監督・脚本】佐藤智也

イメージがリアルに変わる映像の力

鏡に写った自らの裸体と対峙する女性。強調されるのは"乳房"か?やがて水着に身を包むと、ゆっくりとプールに入水する。屋内にあるのか薄暗いプール。仰向けに水面に浮かぶ女性。水のイメージ。

日本人の父・高志(武田裕光)と韓国人の母・チスク(みょんふぁ)の間に生まれた一卵性双生児の姉と弟。空(そら)と海(かい)と名づけられたふたりは、韓国・安東(あんどん)で暮らしていた。山間にある湖の辺りに佇む姉弟。

28歳となった空(イ・テギョン)は、中国・上海で暮らしている。出版社にイラストを売り込むが、手応えは返ってこない。ただ、そこに勤める日本人の望月(阿部力)が空の絵を気にかけ、絵本の挿絵を描いてみないかと声をかけてくる。そしてふたりはよく似た境遇から異郷に暮らすという共通点があることを知る。

空のもとに双子の弟・海が訪ねて来る。すでに性別適合手術を受けた海は、一卵性双生児の姉妹に見える。海は呼び名を"うみ"に変えていた。

空は望月との出会いを海に話す。海はふたりの関係を後押ししようとするが、空は恋愛に発展することには積極的ではない。姉妹には奇妙な緊張関係が見てとれる。それは何か?

『湖底の空』は不思議な映画である。それは語り口がイメージに優先されているからだ。現在と過去、その時々の場も様々に変わる。そしてある事実が明らかにされることで、漂うイメージ、断片だったものが物語として収束してゆく。

監督・脚本の佐藤智也は、短編映画の監督、プロデュースに携わっているが、長編の劇映画は本作が初となる。影響を受けた監督はアンドレイ・タルコフスキー。好きな作品は『ストーカー』(1979=日本公開81年)だという。

本作でも、オープニングのプール、安東の湖といった"水"が印象的に使われている。タルコフスキー映画に登場する水のイメージと重なる部分も多い。

美しい映像に隠された哀しみを湛えた物語。その静かな語り口は成熟の域に達した完成度である。

語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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