岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

Meet somewhere

人種性別に関係なくおこる、人間の業が描かれたアジア映画

2021年07月07日

湖底の空

©2019MAREHITO PRODUCTION

【出演】イ・テギョン、阿部カ、みょんふぁ、武田裕光、アグネス・チャン
【監督・脚本】佐藤智也

数奇な運命に翻弄されてきた空と海の関係に、スリリングに踏み込む

日韓・日中関係は、政治的には冷戦状態で双方が非難を繰り返しているが、一般の人たちの交流は政府の思惑に関係なく活発である。

コロナ前2019年の訪日外客数は、1位中国959万人・2位韓国558万人で、総数3188万人の約47%を占めており日本の観光業には多大な貢献をしている。

出国日本人数は2018年統計で、1位米国394万人・2位韓国294万人・3位中国268万人であり日本人にとって身近な外国となっている。

本作の佐藤智也監督は、日本人の俳優が日本語で演ずる「日本映画」という枠を超え、日本・韓国(安東=アンドン)・中国(上海)を舞台に、三か国の俳優を使い、三か国語が飛び交って展開する「アジア映画」を作り上げた。そこにははったりも気負いもなく、当たり前の様なコミュニケーションと人種性別に関係なくおこる人間の業が描かれている。

日本人の父・高志(武田裕光)と韓国人の母・チスク(みょんふぁ)の間に生まれた、空(そら)・海(かい)という名前の一卵性双生児の姉弟(イ・テギョンの二役)。

「礼節と文化の里」といわれる安東の風光明媚な湖畔で過ごした子ども時代の「回想シーン」と、姉の空が成人後に居を移した上海で、絵本の挿絵の仕事をする「現代パート」。この2つの時代を往復しながら、男性と女性の生理学的性質を両方有する「インターセックス」の弟・海との邂逅を描いていく。

海(かい)は「性別適合手術」を受け女性となり、読み方を海(うみ)と変えていた。

映画は空と日本人編集者・望月(阿部力)との恋愛関係が中々進展していかない真相を紐解きつつ、数奇な運命に翻弄されてきた空と海の関係にスリリングに踏み込んでいく。

まるで絵画の様な美しい風景は、この映画に格調を与えており、映像表現の質の高さを支えている。物語もジェンダーの意味を問い直す構成となっており、真面目で誠実な映画を形作っている。

語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白さから映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白から映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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