岐阜新聞 映画部

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4人目の主人公ホープ・ギャップの白い崖は、リスタートを物語る

2021年07月06日

幸せの答え合わせ

© Immersiverse Limited 2018

【出演】アネット・ベニング、ビル・ナイ、ジョシュ・オコナー
【監督・脚本】ウィリアム・ニコルソン

両親の仲を取り持つジェイミー君が、なんともけなげでいじらしい

本作の主役は3人+αである。仕事を引退して詩集の作成に没頭するグレース(アネット・ベニング)、その夫で高校教師のエドワード(ビル・ナイ)、独立して家を出ている息子のジェイミー(ジョシュ・オコナー)。

そして4人目の主人公が、本作の原題でもある『Hope Gap(ホープ・ギャップ)』である。

脚本・監督のウィリアム・ニコルソンが、自身の両親との実体験をもとにした映画を作るにあたり選んだのは、3人の演技派俳優と、ドーバー海峡に面し数百万年もの時間をかけて作られた白亜系チョーク(石灰岩)の海食崖だ。

舞台となるシーフォードの町にある、この白くて力強い純白の崖は、長年連れ添った夫婦のぎすぎすした関係を調和し、新たな生活のリスタートを物語っているようだ。

子どもにとっての両親の離婚は、成人して独立していても心に与える影響は大きい。ましてや、繊細で優しいジェイミー君にとっては、どちらがいい悪いとかいう話ではなく、自分が間に入るしかないのだとの責務を感じてしまう。

本作が監督の実体験であるだけに、視点はあくまでも監督自身であるジェイミー君の立場で描かれる。

母グレースは、何事にも妥協を許さない強い性格で、夫にもそれを要求し続けている。時には激怒して夫にビンタをしたりテーブルをひっくり返したりする激しい性格だ。しかし母には悪気はなく、夫から離婚を言われるのは青天の霹靂だったりする。

一方父エドワードは、優しい性格ではあるが何事にも煮え切らず優柔不断。結果的には外に愛人がいたりする。

この2人の狭間にたつジェイミー君は、どちらか一方を非難するのではなく、離婚は認めたうえで、仲を取り持ち、両親の人生のリスタートを応援するのだ。

映画は、ジェイミー君の心情が細かく描かれており、救いや希望も読み取れる。

美しいホープ・ギャップの白い崖のように、最後は心がホワイトになる映画だ。

語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白さから映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白から映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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