女人禁制の不条理に立ち向うフェミニスト映画
2021年06月30日
ペトルーニャに祝福を
©Sisters and Brother Mitevski Production, Entre Chien et Loup, Vertigo.Spiritus Movens Production, DueuxiemeLigne Films, EZ Films-2019 All rights reserved
【出演】ゾリツァ・ヌシェバ、ラビナ・ミテフスカ
【監督】テオナ・ストゥルガル・ミテフスカ
どこかで見たこと聞いたことを"重喜劇"に仕立てた秀抜な演出
北マケドニアにある小さな町・シュティプが舞台。32歳になるペトルーニャ(ゾリツァ・ヌシェバ)は、容姿淡麗でもなく恋人もいない。大学を卒業したのに、学歴に見合う仕事はなく、とりあえずのウェイトレス職にはうんざりしている。加えて素直とは程遠い性格は、執拗なプレッシャーをかけてくる母親のせいばかりとは思えないのだが…。
その日は、母が見つけて来た就職先の面接日。出発前、強く釘をさされたのは、年齢を若く誤魔化すことと、愛想良く振る舞うことだった。
そこは多くの女性がミシンを踏む縫製工場だった。対面した面接官はスマホをいじりながら、25歳という年齢の申告を鼻で笑い、デスクワークの経験も、縫製の技術も持たないことに難色をあらわに、こともあろうにスカートに手をかけたてからかった末に、見た目もそそらないことをあからさまな判断材料にしようとする。
最悪のセクハラ面接の帰り道、ペトルーニャはキリストの受洗を祝う"神現祭"に臨む男たちの群衆に遭遇する。
日本では、神事には女人禁制の風習が根強く伝わる。儀式性の高かった相撲でも、神聖とされる土俵には女は立つことが出来なかった。
"神現祭"は、司祭が川に投げ込んだ十字架を最初に見つけ手にしたものが、1年を幸福に過ごせると信じられた神事だった。
日本の各地でも見ることができる女人禁制の伝統神事が、北マケドニアのキリスト教の神事にもあることは驚かされる。そして、投げ込まれた十字架を手にしたのはペトルーニャだった。
映画はこの前代未聞の事態に揺れる怒れる男たちと、ペトルーニャの闘いを描いていく。不公平で不平等な世界に生まれ、女性であることで強制される不条理なルール。
あきらかなフェミニスト映画だが、女流監督のテオナ・ストゥルガル・ミテフスカは重いテーマにユーモアを交えて巧みな構成で語り切る。そこに力強いヒロインを造形しているのも見事だ。
語り手:覗き見猫
映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。
語り手:覗き見猫
映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。