岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

Meet somewhere

よくある設定も、アイデアひとつで感動作となる見本のような作品

2021年06月25日

ラブ・セカンド・サイト はじまりは初恋のおわりから

© 2018 / ZAZI FILMS – MARS CINEMA – MARS FILMS – CHAPKA FILMS - FRANCE 3 CINEMA – C8 FILMS

【出演】フランソワ・シビル、ジョセフィーヌ・ジャピ、バンジャマン・ラベルネ
【監督】ユーゴ・ジェラン

ラファエルが仕掛ける、あざといまでの作戦と方策

SFの世界では、タイムトラベルで過去へ戻り、自分が生まれる前の親を殺してしまうと今の自分はどうなるか?という「親殺しのパラドックス」という問題がある。

この矛盾を回避するための展開として、「矛盾が発生した瞬間、世界が消滅する」「どんな手段を何度使っても、殺すことが出来ない」「親でなくその敵から生まれた」などがあるが、本作は「自分が生まれないパラレルワールドが元の世界から分岐して出現する」という解決策を利用した、ファンタジックラブストーリーである。

高校時代からSF小説を書いていたラファエル(フランソワ・シビル)が、夜の高校でピアノを弾く美少女オリヴィア(ジョセフィーヌ・ジャピ)と、華麗なる逃走劇を経て一瞬にして恋に落ちる。羨ましくなるような展開だ。

時は経て10年。片や売れっ子SF作家(ラファエル)、片やピアノ教室の先生(オリヴィア)。当時の燃えるような愛はすっかり冷め倦怠期に陥っている。正確に言うと、ラファエルは忙しさと名声にかまけて恋も仕事も傲慢になっており、オリヴィアが不満を募らせている格好だ。

こんな状態から、あることをキッカケにパラレルワールドに入っていく。もう一つの世界では、オリヴィアは世界的な有名ピアニストでありラファエルは国語教師。そしてオリヴィアは彼を全く知らないという設定だ。

状況を何とか把握したラファエルは、オリヴィアに「初恋」としてアタックしていく。

映画は、男がターゲットを絞った女性と付き合うために考える、ありとあらゆる作戦やあざといまでの方策を仕掛けていくのを描いていく。ここら辺が初恋時みたいで何とも微笑ましい。

彼が、このパラレルワールドから逃れるために気が付いた、自らのSF連載小説の結末を変えるという結論は、「なるほど、そうか」と得心できる見事な解決策である。

よくある設定も、アイデアひとつで感動作となる見本のような作品だ。

語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白さから映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白から映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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