岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

Meet somewhere

美しい森と湖で世捨人たちが紡ぐ再生の物語

2021年06月22日

やすらぎの森

© 2019 - les films insiders inc. - une filiale des films OUTSIDERS inc.

アンドレ・ラシャペル、ジルベール・スィコット、レミー・ジラール
監督・脚本:ルイーズ・アルシャンボー

「そっとしておいてやれ」他人を気遣う穏やかな交流が心にしみる

カナダ・ケベック州。鬱蒼とした森に囲まれた湖。弛んだ肉体を晒した老いた男たちが、静かな水面にさざなみをたて泳ぎ出す。穏やかな日常がそこにある。

ある日、体調の良くないテッド(ケネス・ウォルシュ)の様子を確かめにやって来たチャーリー(ジルベール・スィコット)は、小屋の中で息を引き取っているテッドを発見する。

弟の葬儀への参列を終えた80歳のジェルトルード(アンドレ・ラジャベル)は、送迎役の甥っ子・スティーヴ(エリック・ロビドゥー)を突然、困惑させる。60年以上にわたり閉じ込められるようにしてきた精神療養所への帰還を激しく拒んだのだ。森で小さなホテルの支配人をしているスティーヴは、叔母の心情を理解し、彼女をホテルに連れ帰る。

若い女性写真家・ラファエル(エヴ・ランドリー)は、地元の美術館からの依頼を受け、かつてこの地域で発生した大山火事の生存者への取材をしていた。そこで、家族全員を亡くした"伝説の生存者"テッドの存在を知り森にやって来る。

『やすらぎの森』の原作はジョスリーヌ・ソシエの小説で、原題を直訳すれば"鳥たちが雨のように降っていた"となる。劇中に現れる"山火事"にちなんだ言葉で、森が燃えると、その煙に巻かれた鳥たちが、逃げ場をなくし一斉に落ちて来る様子のことを言う。

このモチーフは画家であるテッドの作品にも現れるが、これは鳥たちのことだけをさすのではない。世捨人のように森に隠遁する人たちは、それぞれが問題を抱え、自らが安心できる場所として森を選択したという、意味にも反映されている。

映画は穏やかな佇まいを保ちつつ、ある事態が状況を一変させていく。

時として熱く、それでいて優しい人の交わりの最上の場である美しい森と湖。深い哀しみを内包しながらも、新たに踏み出す再生の物語は慎ましく優しい。

語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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