岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

Meet somewhere

家族のドラマに社会問題を織り交ぜた見事な映画

2021年06月16日

海辺の家族たち

© AGAT FILMS & CIE – France 3 CINEMA – 2016

【出演】アリアンヌ・アスカリッド、ジャン=ピエール・ダルッサン、ジェラール・メイラン、ジャック・ブーデ、アナイス・ドゥムースティエ、ロバンソン・ステヴナン
【監督・脚本】ロベール・ゲディギャン

まるで絵画のような美しい風景と、心地よい波や風の音で癒される

今までバラバラになっていた家族が、全員に共通する重大な事態をキッカケとして、再び一ヵ所に集まってきてドラマが動きだす。

この黄金パターンをどうアレンジし、いかに二番煎じと言わせないかが腕の見せ所だが、山田洋次さん(89歳)に賛辞を贈られ、「フランスのケン・ローチ(84歳)」という栄誉ある称号をいただくロベール・ゲディギャン監督(67歳)は、自らのこだわりと作風を堅持しつつ、家族のドラマに社会問題を織り交ぜた見事な映画をこしらえた。

舞台はゲディギャン作品では毎度おなじみマルセイユ。地中海に面したエスタック地区・メジャン入り江にある小さな漁村は、周囲を小高い山に囲まれ、山腹には色とりどりの家が立ち並び、頭上には石積みでアーチ形の鉄道高架橋がそびえる。

このロケーションは映画の重要な舞台装置となっており、風景も出演者の一人のようである。

映画から聞こえてくるのは、波や風の音、日常の環境音、時おり通過する列車の音など。BGMの無い静けさの中、俳優たちの言葉と表情と仕草のみから思いを読み取っていくのだ。押し付けがましさは一切ない。

父が倒れ介護が必要になったことで、3兄弟が久しぶりに顔を揃える。地元で家業のレストランを継ぐ長兄アルマン(ジェラール・メイラン)、最近リストラされた学者の次男ジョゼフ(ジャン=ピエール・ダルッサン)、20年ぶりに戻ってきた人気女優で末娘のアンジェル(アリアンヌ・アスカリッド)。みんなゲディギャン組の常連である。

観光業も寂れ、別荘の持ち主は去っていき、労働者階級の人々が残る村は、閉塞感がいっぱいだが、実家のテラスから見える空と海の景色は、あくまでも美しく解放感がある。そんな中で過ごしていると、ちっぽけな考え方なんか「どうでもいいや」と思えてくるかもしれない。

岸に漂着した難民の子どもたちを優しく迎える兄弟たち。希望と共に映画は終わるのだ。

語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白さから映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白から映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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