岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

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女性解放謳う軽やかなコメディ映画

2021年06月10日

5月の花嫁学校

©2020 - LES FILMS DU KIOSQUE - FRANCE 3 CINEMA - ORANGE STUDIO - UMEDIA

【出演】ジュリエット・ビノシュ、ヨランド・モロー、ノエミ・ルボフスキー、エドゥアール・ベール
【監督】マルタン・プロボ

当たり前だったことが変わったのは、そんなに昔のことではない

1967年、フランス北東部に位置するアルザス地方。ライン川沿いの平原には葡萄畑が広がるのどかな田舎町。そこにある"ヴァン・デル・ベック家政学校"がこの映画の舞台。

今年も18人の新入の少女たちが入学して来る。校長を務めるポーレット(ジュリエット・ビノシュ)は経営者である夫のロベールを支え…いや、自らが学校の屋台骨を担っていると自負している。講師は修道女のマリー=テレーズ(ノエミ・ルヴォウスキー)と義理の妹ジルベルト(ヨランド・モロー)。それぞれが問題を抱えているが、学校には欠かせない存在であることにかわりはない。何より、ポーレットの最大の悩みは、年々減少する入学希望の少女たちだった。

入学式を済ませたある日、ロベールが急死する。悲しみに暮れる彼女たちに追い打ちをかけるように、ロベールが残した多額の借金が発覚する。

家政学校が掲げる目標は、完璧な主婦を育成させることなのだが、そこにはいくつかの鉄則が存在する。

良き妻は…何よりも夫に従い。家事を完璧にこなし不平不満は言わない。家計を管理し、家族の健康管理に責任を持つ。かつ、お洒落には気を使い周りの目を常に意識すること…この束縛だらけの風潮に少女たちは疑問を感じる。

『5月の花嫁学校』の時代のわずか2年前の1965年、フランスでは、既婚女性が夫の合意なしに、職業選択、契約、銀行口座の開設といった財産管理を行えるなどの法改正が行われた。そう、それ以前には、これらの一般的な権利すら、女性には認められていなかった事実を知り愕然とする。

ポーレットはかつての恋人アンドレ(エドゥアール・ベール)と再会し、銀行家である彼に経営を学ぶうちに、学校の再建には前時代的な考え方を捨て、自分らしい生き方をすることが重要だと気づく。
社会の大きなうねり"五月革命"を絡めた女性解放の機運を、あくまでも明るく楽しく描いた快作である。

語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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