岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

Meet somewhere

本を売るだけではなく本を愛する人たちの話

2021年06月02日

ブックセラーズ

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【監督】D.W.ヤング

汚れていても黴臭くてもわたしには宝物に見える"本"がある

初めて観た映画、初めて行った映画館の記憶は、案外はっきりとしていたりするが、本にまつわる記憶はそれに較べれば曖昧になってしまっている。それはきっと、映画館に行くという行為が、イベントに近いものであったこととは違い、本が身近なものとして、日常として存在していたからではないか?

本との出会いは、大人からの読み聞かせという耳からだったり、文字を読むという以前に、絵や写真を見るという関わりからはじまっていることも、記憶を不確かなものにしている。

昔の繁華街はシャッター商店街になり、そこにあった本屋も姿を消した。古い記憶にある本屋は奥行きのない店構えで、屋台店のように迫り出した売り台に本が並べられていたりした。

最近はペーパーレスが話題になり、本のデジタル化は、本屋のみならず、出版業界にまで影響が及ぶ、激動の時代に直面している。

『ブックセラーズ』は、本を売ることを生業とした人たちを見つめたドキュメンタリーである。しかし、そこに現れる本を売る行為は、街の本屋のそれとは大きく異なる。

ニューヨークのブックフェア。それはさながら国際展示場などで開かれる見本市の規模で、個性豊かな店舗が区切られたブースで店を開いている。そこにはコレクターならば舌舐めずりするであろう稀少本が並ぶ。

書店主たちも実にユニーク。本を売るという行為の前に、本を見つけるというコレクター根性が剥き出しになり、いつしか話は本を探し出した自慢話に転じ、商売はそっちのけの状態になる。溢れ出すのは本への愛なのだ。

冷静な人ならば、ここに登場する人たちを変わり者と、些か引いて見るのではないだろうか?

個人的な話をすれば、映画に登場する奇人たちの気持ちは実に良く理解できる。そうです…私も立派な本狩人だからです。

怖いもの見たさ、というのは大袈裟でも、ちょっと特異な世界に触れることは、あなたの隠くれていた好奇心を刺激してくれるかも?

語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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