岐阜新聞 映画部

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電流戦争の勝者の数奇な半生

2021年05月25日

テスラ エジソンが恐れた天才

© Nikola Productions, Inc. 2020

【出演】イーサン・ホーク、カイル・マクラクラン
【監督・脚本・製作】マイケル・アルメレイダ

孤立する天才を救う人との出会いとその末路

1856年、ヨーロッパ、オーストリア帝国、現在のクロアチアに生まれたニコラ・テスラは、夢を抱きアメリカに移民としてやって来た。

1884年、テスラ(イーサン・ホーク)は、憧れの人、発明王としてその名を轟かせていたトーマス・エジソン(カイル・マクラクラン)のもとで働き始めていたが、開発中の送電システムの方法、直流か交流かで対立する。

昨年公開された『エジソンズ・ゲーム』はこの送電システムの主導権争い、"電流戦争"をエジソンの側から描いた映画だったが、この作品にもテスラが登場する。若き日のテスラは、野心に燃え、自らの信念を曲げることなく、師でもあるエジソンに反発、意見する。

『テスラ エジソンが恐れた天才』は、同じ時代、同じ題材であるが、主役をテスラにして描いていることで、その印象はかなり異なる。

エジソンと訣別したテスラは、実業家ウェスティングハウスと手を組み、コストにおいて圧倒的な優位にあった直流システムを推進する。

"偉大な人物"、偉業と言えるような成功を成し遂げた人物には、輝ける賞賛の陰に孤高とか異端という別の顔が浮かび上がる。それは時に、狂気として伝説化される。

監督、脚本のマイケル・アルメレイダは、正統的な伝記として、天才発明王テスラを描いてはいない。物語は中断し、イメージが先行した、シュールなシーンが登場する。野心的で実験的な試みだが、狂気をあぶり出す手段としては、"スベってる感"があることは否めない。

シカゴ万国博覧会でエジソンに勝利したテスラは、大財閥J・P・モルガンの娘アンと出会い、莫大な資金を獲得し、次なる発明"無線通信"の実現に向け邁進、没頭する。その前途には揚々たる栄光の道がひらけているはずだったが…。

テスラを演じたイーサン・ホークは、エキセントリックな人物を実験的な試みを交えた表現で、見所たっぷりに力演し、焦点が定まらないままふらつき気味の映画をかろうじて支えている。

語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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