岐阜新聞映画部映画館で見つけた作品コントラ KONTORA B! 過去を追う少女と後向きに歩く男の魂の交錯 2021年05月18日 コントラ KONTORA Ⓒ 2020 KOWATANDA FILMS. ALL RIGHTS RESERVED 【出演】円井わん、間瀬英正、山田太一、セイラ、清水拓藏 【監督・脚本】アンシュル・チョウハン 美しいモノクロ映像から浮かび上がるいくつかの明確なテーマ 日本の何処かにある田舎町。高校生のソラ(円井わん)は、自転車のチェーンが切れてしまったことくらいで、自らも激しくブチ切れる。多感な反抗期に加え、母のいない閉塞的な父子家庭で、唯一の話相手であった祖父を突然亡くしたことが、ソラの精神的な安定を揺るがしている。そして、父親(山田太一)との関係は完全に冷え切ってしまっていた。 ある日、祖父が遺した日記を見つける。その日記は第二次大戦中に記されたもので、特攻隊員であった祖父が見、体験した兵士たちの姿と、宝物と思しきものの在処を示す、精緻な絵が記されていた。ソラは密かに宝探しを始める。 同じ頃、町では突然、後ろ向きに歩く男(間瀬英正)が出現する。無言のまま、ひたすら歩き続ける男は素性の知れないホームレスだった。そんな時、ソラの父親の車が後ろ向き男を轢いてしまう。 『コントラ』を監督したアンシェル・チョウハンは、1986年北インド生まれ。陸軍士官学校で訓練を受けた経験もあるが、2006年から、アニメーターとして働き始め、2011年には東京に拠点のある会社で、数々の作品に関わった。2016年頃からは映画製作へと進出し、これまでに長編2作を完成させている。 この映画は「家族を交通事故で亡くしたある男性が、過去に戻ろうと後ろ向きに歩きだした」という記事にヒントを得たという。 物語は当初、インドに暮らす監督の家族を思いながら構成された。日本での映画化には戸惑いもあったが、第二次大戦の特攻隊員が遺した手紙を読む機会を得て、国は違っても共有できる思いがある事を知り、憂慮は払拭された。 宝物の謎、後ろ向きに歩く男の謎、それらは幾重にも交錯しながら、解き明かされていく。 過剰に横道に逸れ遠回しになる部分が気にならないでもないが、コントラストの効いた美しいモノクロ映像とともに、作品の根底にある"物質主義"批判を含め、時に象徴される忘却の無念はよく伝わる。 語り手:覗き見猫映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。 100% 観たい! (15)検討する (0) 語り手:覗き見猫映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。 2024年03月27日 / COUNT ME IN 魂のリズム ドラムを主役にした音楽ドキュメンタリー 2024年03月27日 / COUNT ME IN 魂のリズム 全編ドラム愛に満ち溢れた、身体で感じられる音楽映画 2024年03月26日 / 瞳をとじて 時と記憶をたどる哀しくとも美しい物語 more 2021年11月10日 / 【思い出の映画館】会津東宝(福島県) 歴史と文化の東北の町で子供たちに夢を贈り続けた。 2020年10月28日 / 別府ブルーバード劇場(大分県) 子供に夢を与えたいという思いから始まった映画館 2019年03月27日 / シネマノヴェチェント(神奈川県) 埋もれた映画に愛の手を…商店街の中のこだわり名画座 more
美しいモノクロ映像から浮かび上がるいくつかの明確なテーマ
日本の何処かにある田舎町。高校生のソラ(円井わん)は、自転車のチェーンが切れてしまったことくらいで、自らも激しくブチ切れる。多感な反抗期に加え、母のいない閉塞的な父子家庭で、唯一の話相手であった祖父を突然亡くしたことが、ソラの精神的な安定を揺るがしている。そして、父親(山田太一)との関係は完全に冷え切ってしまっていた。
ある日、祖父が遺した日記を見つける。その日記は第二次大戦中に記されたもので、特攻隊員であった祖父が見、体験した兵士たちの姿と、宝物と思しきものの在処を示す、精緻な絵が記されていた。ソラは密かに宝探しを始める。
同じ頃、町では突然、後ろ向きに歩く男(間瀬英正)が出現する。無言のまま、ひたすら歩き続ける男は素性の知れないホームレスだった。そんな時、ソラの父親の車が後ろ向き男を轢いてしまう。
『コントラ』を監督したアンシェル・チョウハンは、1986年北インド生まれ。陸軍士官学校で訓練を受けた経験もあるが、2006年から、アニメーターとして働き始め、2011年には東京に拠点のある会社で、数々の作品に関わった。2016年頃からは映画製作へと進出し、これまでに長編2作を完成させている。
この映画は「家族を交通事故で亡くしたある男性が、過去に戻ろうと後ろ向きに歩きだした」という記事にヒントを得たという。
物語は当初、インドに暮らす監督の家族を思いながら構成された。日本での映画化には戸惑いもあったが、第二次大戦の特攻隊員が遺した手紙を読む機会を得て、国は違っても共有できる思いがある事を知り、憂慮は払拭された。
宝物の謎、後ろ向きに歩く男の謎、それらは幾重にも交錯しながら、解き明かされていく。
過剰に横道に逸れ遠回しになる部分が気にならないでもないが、コントラストの効いた美しいモノクロ映像とともに、作品の根底にある"物質主義"批判を含め、時に象徴される忘却の無念はよく伝わる。
語り手:覗き見猫
映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。
語り手:覗き見猫
映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。