岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

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無言で後ろ向きに歩く奇妙な男、見る人の想像力を掻き立てる映画だ

2021年05月18日

コントラ KONTORA

Ⓒ 2020 KOWATANDA FILMS. ALL RIGHTS RESERVED

【出演】円井わん、間瀬英正、山田太一、セイラ、清水拓藏
【監督・脚本】アンシュル・チョウハン

岐阜県関市でオールロケをした、紛れもない日本映画

本作の監督アンシュル・チョウハンさんはインド人である。ハリウッドではアメリカ国籍以外の人が監督する映画も多く、普段「〇〇人が撮った映画」と意識することなく観ている。しかし日本だと、「インド人監督の目に映る日本を描いた映画」と先入観を持って見てしまうのではないか?

『コントラ』は、岐阜県関市でオールロケをした紛れもない日本映画であり、父と娘の冷めた関係性や血縁間のよけいな口出しやひがみ、世代を通じての戦争体験の継承などを描いた、映像美に酔いしれることのできる傑作である。

全編モノクロームの撮影は、過去と現実、ファンタジーとリアリティの境目を違和感なく写しだし、物語に没入させてくれる。陰影のある画面は、ありふれた田舎の一本道、後ろにある里山を、テーマを物語る重要な風景に変貌させる。

主人公の高校生ソラ(円井わん)と父親(山田太一)。ソラは煙草は吸うしお酒は飲むし学校はサボる、一般的に言えば不良少女だ。一方父親も、飲酒運転はへっちゃらだし人をはねて逃げようとする自分勝手な犯罪者。そして父親の従弟も、己の欲だけを正当化し暴力的に従わせようとする偽善者だ。

こんな身勝手な人ばかりの世界に唐突に現れる、無言で後ろ向きに歩く薄汚れた男(間瀬英正)。映画はこの奇妙な男の行動をどう解釈するか、見る人の想像力を搔き立てる。

ソラが見つけた、大好きだったおじいちゃんの戦時中の日記に記された、特攻隊の基地での理不尽な仕打ちとその時の心情、森の中に埋められた宝物?が、その解釈のヒントとなる。

ちなみに日本の軍人は戦地においても日記をつけることが義務付けられており、米軍は戦場に遺棄された兵隊の日記から、日本軍の作戦を探知したり、厭戦的な心情を察知したらしい。

後ろ向きに歩く男の正体は、映画を見てそれぞれが判断すべきと思うが、戦争や歴史に興味をもち、議論するキッカケを与えてくれる映画だ。

語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白さから映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白から映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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